成長途中の組織に携わるためエス・エム・エスに転職した、エンジニアリングマネージャーの挑戦

はじめまして。エス・エム・エスで、エンジニアリングマネージャーとして働く岩田です。

エス・エム・エスは従業員が2千人近い企業であり、組織も整っている、安定した大企業というイメージを持つ人もいるかもしれません。

しかし、私の担当するクラウド型の介護事業者向け経営支援サービス「カイポケ」の開発組織は、まだまだ成長途中。土台を整えていくフェーズだからこその面白さを感じています。

この記事では、私がエス・エム・エスに入社を決めた理由や、組織改善の取り組みについてお伝えしていきます。エス・エム・エスの魅力が少しでも伝われば嬉しいです。

組織開発の力を試せる、成長できる“カオス”を求めて

私は、もともと技術やコンピュータに関心があり、大学も情報系の学科を専攻。卒業後はエンジニアとしてシステムやWebサービスの開発に携わってきました。

組織開発に関心を寄せるようになったのは、前職のメガベンチャーでの経験です。チームリーダーとしてマネジメント業務に携わるなかで、若手メンバーの育成やキャリア形成について考えることが増えて、カジュアル面談を取り入れたり、社内勉強会を企画したりしました。

育成に関わるようになると、育てたメンバーが辞めていくときに「あの時、岩田さんに相談したから決断ができた」といった言葉をかけてくれることもあり、嬉しかったですね。

同時に、20代の頃に抱いていた、スペシャリストとして技術力で勝負したい気持ちにも、変化が訪れました。技術を突き詰めるだけではなく、チームや組織が良い状態になければ、優れたプロダクト開発はできないのではないか。役職を重ねていくにつれ、一層そう思うようになったんです。

また、エンジニアのなかにはマネジメントに苦手意識を持つ人も少なくない。そこを埋めるようなキャリアを積んでいけば、より社会や業界において価値を発揮できますし、自分自身のチャンスも広がるのではと思ったんです。

エンジニアリングマネージャーの岩田

前職では、組織開発や育成も含め、自由にチャレンジさせてもらい、楽しく働いていました。しかし、40歳前後になって、培った力が外でも通用するのかが気になり始めました。「ここで何となく過ごしてしまって良いのか?」という気持ちもあって、転職を考えました。

重視していたのは「自分が成長できること」でした。今後のキャリアを考えたときに、「もう一段階、成長をしないといけない」という気持ちがあったからです。

そんな私に転職エージェントが紹介してくれたのが、エス・エム・エスでした。実は、数年前にも一度転職を考えていた頃に、話を聞いたことがありました。お客様に対して誠実な対応をしている姿が伝わってきて、素敵な企業だなと印象に残っていたんです。

数年越しに出会えたのも縁だと感じ、話を聞いてみることに。すると、開発組織は最初に出会った時の約1.5倍程度になっているものの、まだまだカオスな状態だとわかりました。「開発組織の改善が、会社全体の成長を牽引する鍵になる。今はそこに課題がある」とも言われました。

私は前職でも、組織が9年間で数倍に拡大するフェーズを体験し、ジェットコースターのような変化に対応するなかで大きく成長できた実感がありました。

話を聞いていて、エス・エム・エスはまさに同じような状況であると感じましたし、そこに前職とは違う立場で携わってみたいと思ったんです。立場が変わっても、前職での成長を再現できるのか、試してみるのも面白そうだなと感じました。

組織・チーム・人が一体となって、価値提供できるように

入社後は、介護事業者向け経営支援サービス「カイポケ」の開発組織に、エンジニアリングマネージャーとして配属されました。「カイポケ」は、介護事業者の経営改善に役立つ40のサービスで構成されているプロダクト。開発組織は、大小合わせて約10チームで運営しています。

まずは現状を探るために、チームの定例やメンバーとの1on1を通じて、組織の良い点や課題点を明らかにしていきました。

良い点としては、サービスや事業への愛が強く、真面目なメンバーが多いことが挙げられます。個人が自律的に動こうとし、能動的な助け合いが起きているのも印象的でした。

一方、いくつか解くべき課題も見えてきました。それらを踏まえ、入社後は大きく以下の施策に取り組んでいます。

  1. プロダクト全体の意思決定をする専門チーム「プロダクトボード」の設立
  2. チームごとのロードマップの可視化と共有
  3. 評価制度の運用

各施策について、どのような課題意識のもと立案したのか、どのように導入・運用を進めていったのかについて紹介できればと思います。

「プロダクトボード」の設立

プロダクトボードは現場のメンバーも参加し、プロダクト全体の意思決定をする機関です。今は、私と事業側のマネージャー、プロダクトマネージャー、エンジニア合わせて8名で運営しています。

課題意識

もともと、カイポケの開発組織では、チームの担当範囲についてはそれぞれが決め、横断的な意思決定はエンジニアリングマネージャーの私と事業マネージャーで担っていました。業務としては問題なく回っていますが、方向性を一つにまとめる場や人がいない状態でした。

これから組織規模が大きくなってくると、全体としてどう動いているのかが見えづらくなることが予想されます。エンジニアリングマネージャーである私が、現場の状況を掴むのも難しくなっていくはずです。

現場にとって納得感のない決断は、スケールを妨げることにもなりかねません。個人的な経験からも、現場に近い人たちが自ら議論して意思決定をするほうが、よりよい解にたどりつけると思っています。カイポケの開発組織も、プロダクトの方向性を自分たちで決められるようにしていきたいと考えていました。

また、カイポケの事業成長においては、新たな価値創出につながるプロダクトの実現と、既存プロダクトの安定化や市場ニーズへの対応が欠かせません。両方のバランスを取りながら、機動的に、組織としての意思決定を行う必要がある。そのためにも、事業戦略との接続や戦略実行を推進する機関を、新たに立ち上げるべきだと考えていました。

実施したこと

まずはメンバーにプロダクトボードの目的を伝え、2021年の年明けから試験的にスタートしました。私と事業マネージャーによるファシリテーションのもと、各チームから1〜2名、合わせて10名ほどが参加しました。

しかし、端的に言うと、うまく機能しませんでした。前提やコンテクストの共有が不十分であったこと、人数が多すぎて十分に話せない人がいたことなどがあり、議論や意思決定が思ったようには進まなかったんです。

反省を踏まえ、約1カ月後に「プロダクトボード準備委員会」を立ち上げました。これは、プロダクトボードの背景にある課題意識を共有し、どんなチームを作るかを議論する委員会です。トップダウンではなく、準備段階から開発組織のメンバーを巻き込み、一緒に作り直していきました。

その結果、前提や課題意識を共有でき、見えていなかった現場の課題や改善のアイデアも、メンバーから挙がりました。

準備委員会での議論を踏まえ、プロダクトボードは人数を絞って進め方を調整し、2021年5月末に再び始動しました。運用しながら引き続きブラッシュアップしていきます。

※ こちらのプロダクトボードについては後日改めて記事を作成する予定です。

チームごとのロードマップの可視化と共有

ロードマップは2020年の夏から始めた取り組みです。各チームが年度内に「チームとしてどこを目指すのか?」「その目的に向けて、どのように進むのか?」を考え、共有します。

課題意識

カイポケの開発組織は「現場のことは現場で決めたほうが良い解が得られる」という考えのもと、個人やチームが自立性を高めてきました。その考え自体には同意するのですが、チーム間の連携が弱く、サービスとして目指す方向性に意識のバラツキがあったんです。

足並みを揃えるためには、それぞれのチームが「事業や顧客にどんな価値をもたらしたいのか」という方向性を言語化し、それらをロードマップとして組織全体に共有して、お互いに理解を深める機会が必要だと考えました。

また、チーム単位でプロダクトの提供価値や開発の意義を深く考える習慣ができれば、チームメンバーはより中長期的な視点をもって日々の業務における意思決定を行えるようになります。それはプロダクトの成長にも寄与するはずです。

チーム間の連携やチームメンバーの成長、そしてプロダクトの成長を考え、ロードマップを作成しようと決めました。

実施したこと

まずはプロダクトマネージャーと、ロードマップに加えるべき項目を話し合い、以下を設定しました。

  1. テーマ(製品開発の狙い)
    (例)ノックアウト要素回避。顧客獲得促進。
  2. テーマを選んだ背景
    (例)厚労省シナリオの××から。顧客要望を基にした〇〇の仮説から。
  3. 価値提供先
    (例)介護事業者。エス・エム・エスのカスタマーサポート。開発者。
  4. 価値提供先に届ける価値
    (例)事業者の××が楽になる。開発者の生産性が向上する。
  5. 製品をリリースしたことによって得られる効果(テーマとの連動)
    (例)補助金の対象になり、獲得効率がアップする、競合他社への劣後防止。

これまで組織としてロードマップの作成は求めてこなかったこともあり、最初は「なぜやるのか?」と戸惑いの声も挙がりました。メンバーからの疑問に一つひとつ答えたり、毎月フィードバックのタイミングを設けてディスカッションを重ねたりして、浸透を図りました。

まだまだ、一体感が醸成できたと言えるレベルには達していないと捉えています。ただ、チームにおいて「自分たちがどこを目指すのか、何のためにやるのか」を考え、立ち返る意識が根付き始めている実感があります。所属するメンバーの目線も上がり、半年先、一年先を見据えて思考、行動できるように変化してきました。

評価制度の運用

評価制度については、正しい評価をしてメンバーの成長を促すために、運用の仕組みを整えました。

課題意識

カイポケの開発組織の課題として、一人ひとりの技術力のバラツキや育成の仕組みが足りないことが挙げられます。

当たり前のことですが、チームで働く人はロボットではありません。人間が成長できる制度や環境があり、それがチームのパフォーマンスにつながる状態をつくっていきたいと考えていました。

そのために、より成長や育成に寄与する形で、目標設定や評価制度の運用を整備しました。

実施したこと

2020年は、目標設定のスケジュール管理や、評価の観点を定めたシートの設計など、運用フローを整備しました。基本的には、成長を達成するために目標があり、その成果として評価をするという考え方に則っています。

2年目の今は、昨年見えてきた課題をもとに、改善を重ねているところです。例えば「年に一度の人事考課の他にフィードバックの機会がなく、自分の状態がわかりにくい」という声に対し、3カ月ごとに仮評価のタイミングを設定しました。メンバーが今の評価や目標との距離を把握し、安心して日々の業務に取り組める形をつくるのが、今期の取り組みです。

3つの施策を通して、組織全体で納得できる意思決定を行い、チームで方向性を共有し、個人が目標に向かって成長し続ける組織にしていきたいです。それによって事業やプロダクトでより価値を提供できるようになると思っています。プロダクトボードやロードマップ、評価制度はそれぞれ別の施策ですが、相互に結びついているのです。

いずれも「カイポケ」にとって、大きな変化となりましたが、上司は「やってみたらいいんじゃないですか?」と、自由に挑戦させてくれました。「まずはやってみよう」とトライし、何かあったらすぐ改善するスタイルで取り組んでいます。

事業の安定性と答えを探究できる余白が魅力

今のエス・エム・エスは、元々の強みであるセールスやマーケティングに加えて、エンジニアリングにも注力し、開発組織を強化していくフェーズです。ビジネスの基盤がありつつも、開発組織はまだまだ成長途上。正解も間違いもないからこそ、答えを自分の力で導き出せる面白さがあります。

事業側だけでなく、開発側にも大きな権限があり、良いプロダクトを作るための試行錯誤を繰り返せる環境は、希少だと感じています。

さらに、プロダクトを通して、働き手不足などで悩む介護業界にアプローチできる。日々ニュースなどで介護の話題が取り上げられるたびに、自分が取り組んでいる仕事の意義を実感します。

今後も、プロダクトを利用してくださるユーザーの方に、少しでも良い影響を与えられるものを作れる開発組織にしていきたい。そのために、一人ひとりが自律してフラットな関係を築いているけれど、必要なときには一丸となって困難に立ち向かえるような、個性豊かで柔軟性のある組織にしていきたいです。

また、エス・エム・エスのエンジニアメンバーがエンジニアの市場において「エス・エム・エスのエンジニアは、品質に妥協しない、誠実な人が多い」と評価してもらえるようにしたいです。