意思決定と学習をスケールさせるエンジニアの採用

こんにちは、カイポケの開発組織責任者をしている酒井です。

今日は私の大切な仕事の1つである「エンジニア採用」について書きます。この記事は 株式会社エス・エム・エス Advent Calendar 2025 の23日目の記事です。

「意思決定をスケールするエンジニア」がなぜ重要なのか

エス・エム・エスの事業領域は、制度・業務・環境が複雑に絡み合う変化の大きい「社会課題」という不確実性の高い領域です。プロダクト開発において重要なのは、こうした不確実性と向き合いながら、試行錯誤を通じてソフトウェア設計へと落とし込み続けられるかどうかだと考えています。

事前に立てた計画どおりに進めれば問題が解決するわけではなく、絶対的な正解が存在しない中で、状況に応じた判断を積み重ねながら物事を前に進めていく力が求められます。そのためには、特定の個人の力量に依存するのではなく、組織としてスキルやマインドセットをバランスよく身につけていく必要があります。

私たちが採用したいエンジニアは、単に経験が豊富な人という意味での「強い個人」ではありません。実装が速いことや難しい技術に詳しいことは前提条件の一部にすぎず、本当に重視しているのは、判断を引き受け、学習をチームに広げ、不確実性の中でも組織として前に進められる状態をつくれるかどうかです。

プロダクトや組織が成長するにつれ、意思決定は一部の人に集中しやすくなり、結果としてスピードを失ってしまうことがあります。そのボトルネックを解消するためには、強い個人を増やすこと以上に、判断と学習が分散する構造をつくることが重要だと考えています。

このような「意思決定をスケールするエンジニア」に対して、私たちは何を大切にし、採用の現場ではどのような点を見ているのかについて以降で整理していきます。

何のための「技術力」か

私たちの採用プロセスでも、他の多くの企業と同様に、ソフトウェアエンジニアの選考において「技術面接」を行っています。ここでは、過去のご経験を伺いながら現実の問題やビジネス上の課題をどのように捉え、ソフトウェアとしてどのように設計してきたのか、その難易度やスケール感などを理解させていただいています。

技術面接の結果は、能力を把握するうえで非常に重要な情報ではありますが、それだけで採用を決める十分条件とはしていません。特により高い期待役割を担っていただくポジションになるほど、技術的な正しさだけで問題を閉じてしまわず、周囲の思考を広げ、チーム全体の学習速度を高める関わり方ができるかどうかも含めて見ていきたいと考えています。

問題解決の能力

前述のとおり、私たちが向き合っている事業領域には常に高い不確実性が存在します。ときには、機能を開発する意味(WHY)そのものが明確に定義されていない状態で向き合うこともあります。

そのような状況において私たちが期待しているのは、「これはプロダクトオーナーが決めること」と線を引くことではなく、必要なコンテキストを集め、自分ごととして課題設定に関わりながら少しずつソフトウェア設計の材料をつくっていく姿勢です。

表層的に現れている問題だけを塞ぐのではなく、なぜその問題が起きているのかを考え、アーキテクチャや組織、プロセスといった複数の観点を行き来しながら構造的に課題を捉え直していくことが重要であり、そのための手段として「技術」を使っているエンジニアと一緒に仕事をしたいと私たちは考えています。

面接では「設計」の経験について多く伺いますが、一般論としての設計ではなく、向き合ったドメイン固有の不確実性に対してどのような設計判断を行ったのか、その設計が時間の経過とともにどのように変化していったのか、複数の選択肢の中からなぜその判断を選んだのか、何を守り、何を捨てたのかといった「判断の背景」を重視しています。

リーダーシップのあり方

技術力と同様に、採用においてはエンジニアとしての「リーダーシップのあり方」も大切にしています。

私自身は、強いリーダーシップに必ずしも肩書きは必要ないと考えています。権限の有無に関わらず、状況を理解し根本的な課題を設定しながら物事を前に進めていく力や、意見の対立を恐れずに状況を整理し、挑戦の道筋を描いていく力こそが重要だと考えています。

これまで多くの面接を担当してきた中で、複雑な問題解決を経験してきたエンジニアの多くは、再現性のある「技術以外の能力」を併せ持っていると感じることが多くありました。特に、社会的背景や業界特性、ビジネス上の文脈といったコンテキストを理解しようとする姿勢が強く、「なぜ(WHY)、このタイミングで(WHEN)、誰のために(WHO)、この問題を(WHAT)、解く必要があるのか」といった点について、解像度の高い説明をしていただけることが多い印象です。

また、そのようなリーダーシップを発揮する方ほど、他者や状況からのフィードバックに対しても柔軟であるように感じます。他者からの指摘や、判断の結果としてユーザーから寄せられた意見に対して、防御的になるのではなく自分の前提を疑い問題を捉え直そうとする姿勢を持っているかどうかを大切に見ています。

面接の場では、私自身が理解しきれなかった点や違和感を覚えた点については率直に質問するようにしています。もちろん、意図的に揚げ足を取るような聞き方をすることはありませんが、お互いの考えをすり合わせるための対話として、その背景や判断理由を丁寧に伺うようにしています。

制約が強い環境であること

問題解決力やリーダーシップに加えて、外部環境による制約と向き合いながらエンジニアリングを行ってきた経験があるかどうかも、大切な観点の1つです。

法制度や業界特有の商習慣、リソースや時間の制約、大規模で複雑なソフトウェアといった前提条件の中で、理想を理解しつつも現実的な着地点を見出してきた経験やその中で「将来変えられるもの」と「変えられないもの」をどのように切り分けて考えてきたのかは、必ず伺うようにしています。

介護業界においては、複雑な法制度が顧客業務にとって大きな制約となり、同時にソフトウェア設計にも強く影響します。これらを無視することはできない中で、何を選び、何を捨てるのかという判断を積み重ねてきた経験は、私たちが特に大切にしたいポイントです。

頭数で解決しない採用

私たちは、複雑で不確実性の高い社会課題に向き合いながらソフトウェア開発を行っています。もちろん、ここまでに書いたすべての能力や経験を一人のエンジニアに求めているわけではありません。

採用において私が大切にしているのは、人数を目標にして「強い個人」を集めることではなく、未来の「強いチーム」をつくるために必要な視点や役割を持った方と出会うことです。

選考の場で多くのエンジニアの方と対話する中で、私自身も日々多くの学びを得ています。これまでエス・エム・エスの採用に関わってくださったすべての方に感謝しつつ、これからも、組織の未来を一緒につくっていける方との出会いを大切にしていきたいと考えています。

引き続き、カジュアル面談や選考へのご応募をお待ちしています。