はじめに
はじめまして。人材紹介開発グループで管理栄養士・栄養士向け人材紹介サービス「エイチエ 転職」のWeb開発を担当している吉村です。
本記事では、私が所属する開発チームと、集客を担当する企画チームが合同で実施したサービス改善の取り組みとして、バリューストリームマッピングを紹介します。
バリューストリームマッピングとは
バリューストリームマッピング(Value Stream Mapping、以下VSM)は、顧客にサービスが届くまでの業務プロセスを可視化し、ムダな待ち時間や手戻りなどの課題を見つけるための手法です。
開発チームだけでなく、企画チームなどの関連部署が一緒に可視化することで、課題に対する共通認識を持ち、改善をスムーズに進めることができます。
実施の背景
私たちのサービスでは、次のような課題がありました。
- タスクの目的や背景のすり合わせに時間を要し、タスク着手までに待ち時間が発生
- ユーザーレビューとコードレビューの観点が標準化されておらず、判断のばらつきによる手戻りが発生
- 企画からリリースまでのリードタイムを見通しづらく、施策の進捗状況を把握しにくい
これらは以前から企画・開発間で漠然と認識されていましたが、どのように改善するかを明確に決めることができていませんでした。
この状態を改善するために、開発チームと企画チームで合同のVSMミーティングを実施することにしました。
進め方
今回は、事前準備と当日のVSMミーティングを次の流れで進めました。
事前準備
- VSMミーティング前に、企画からリリースまでの流れを時系列で図に起こす
- その図を参加者に事前共有し、工程に過不足がないか確認してもらう(ほかに工程があれば追加してもらう)
- 参加者に、各工程の課題と改善案を事前に記載してもらう
VSMミーティング当日
- 一連のフローを全員で確認し、各工程の所要時間、待ち時間を話し合いながら算出する
- 課題と改善案を確認したうえで、チームとしての改善施策を決定し、優先度付けを行う
なお、各工程の所要時間や待ち時間は、厳密な時間での計測が難しいため、0.5日単位で多めに見積もって設定しました。
VSMミーティングで作成したVSM図(イメージ)
詳細な内容は伏せていますが、以下のように「フロー」「課題」「改善案」を並べて可視化しました。

結果
VSMを通じて課題に対する共通認識を持てたことで、取り組むべき改善施策を明確にできました。
以下では、改善施策の内容と、数か月運用した後に得られた結果を紹介します。
1. 各工程間の待ち時間を短縮
改善内容:各工程間の待ち時間を減らすため、半日以内に返事がない場合は担当者に個別連絡して確認を促す運用に
結果:確認待ちによる滞留が減り、工程間の流れがスムーズになった
2. タスク起票時の品質担保
改善内容:考慮漏れや対応内容の不明確さ、認識のずれを防ぐため、タスク起票時のフォーマットを用意し、起票後は企画側と開発側の担当者が確認する運用に
結果:企画・開発間での仕様確認のやり取りが減り、手戻りも減少した
3. 進行状況の可視化
改善内容:利用中のタスク管理ツールで、ユーザーレビューとコードレビューを子課題化し、開始日と期限日を明示する運用に
結果:企画側でもタスクの進行状況を把握しやすくなり、施策運用での意思決定がしやすくなった
4. レビュー観点の統一
改善内容:テスト仕様書のマスターを整備して必須確認項目を明確化し、タスクごとの確認内容を追記したうえで、ユーザーレビューとコードレビューを行う運用に
結果:レビュー観点がそろったことで、動作確認漏れや認識のずれに起因する手戻りを減らせた
継続実施で得られた変化
1回目の実施から数か月後に同様のVSMミーティングを再実施し、リードタイムをあらためて算出しました。
その結果、企画からリリースまでのリードタイムは、第1回の11日から第2回では9日となりました。2日(約18%)の改善が確認できました。
うまくいった点・難しかった点
うまくいった点
- 事前に各工程の課題と改善案を洗い出してもらっていたため、当日のVSMミーティングは短時間でも論点を絞って進められた
- これまでは改善に関する相談が個人間で完結しがちだったが、VSMミーティングの場で可視化して議論したことで、チーム全体で共通認識を持てた
- 個別に見えていた課題の背景に共通原因があると分かり、同じ解決策で複数工程の課題を解決できた
- 企画と開発それぞれの目線で課題を出し合ったことで、一方の視点だけでは見えにくかった新たな視点を得たうえで、より具体的に議論できた
難しかった点
- 各工程の時間を正確に把握するのは難しく、とくに実装工程はタスクの種類が多様で、所要時間のばらつきが大きかった
- 加えて、タスク管理ツールの運用ルールが十分に整備されておらず、ツール上のデータを十分に活用できなかったため、リードタイム算出が難しかった
最後に
VSMに取り組んだことで、課題を解決するだけでなく、企画と開発が同じ前提で改善を議論できる状態をつくれました。
また、第2回の実施を通じて、工程単位の改善だけでは解消しきれない課題も改めて明確になりました。
具体的には、各工程の待ち時間や手戻りを減らす取り組みに加えて、改善対象を課題設定や施策検討の段階まで広げて考える必要があることをチームとして再認識しました。
そのため今後は、フロー構造そのものの見直しに加え、タスクの質の向上やサービスの方向性の整理にも、企画と開発で連携しながら取り組んでいきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
