カイポケユーザーのケアマネジャーに1日密着してみた!

こんにちは、カイポケのリニューアルプロジェクトを担当しているプロダクトマネージャーの田村恵(@megumu_tamura)です。今回は、介護事業者向け経営支援サービス「カイポケ」のユーザーである、ケアマネジャーの松本さんに1日密着させていただいた活動について紹介します。この活動は、「ユーザー訪問のすゝめ: BtoB SaaS開発組織におけるユーザー理解のための取り組み」の記事でも触れたコンセプトに沿ったものです。

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ユーザー訪問の目的

私たちの目的は、カイポケをどのように活用しているか、及びカイポケの使用に限らずケアマネジャーが直面している課題を把握することです。現場の実情を深く理解し、それを機能開発の基にすることが、優れたプロダクトを生み出す上で欠かせません。従来から実施しているユーザー訪問に加え、今回は課題に対する理解を一層深めるために1日密着というアプローチを採りました。

ケアマネジャーって何をしている人?

ケアマネジャーは、在宅介護が必要な利用者及びその家族に対し、適切なケアプランの作成と実施を支援する専門家です。彼らは利用者の生活状況や健康状態を評価し、適切な介護サービスを提供するための調整を行い、利用者が自宅で安心して生活できるようサポートします。さらに、ケアプランの進行状況を定期的に確認し、利用者の状態に合わせてプランの調整を行います。

このプロセスを通じて、ケアマネジャーは利用者と家族の生活品質の向上を目指し、多様な職種と連携しながら役割を果たしています。今回は、ケアマネジャー松本さんが担当する利用者宅への月1回のモニタリング訪問に同行させていただくことになりました。

現場での学び

9:30に駅で松本さんと合流し、そこから私たちの1日密着がスタートしました。

合流直後、松本さんが車内で利用者のケアプランと利用票の更新作業に慌ただしく取り掛かりました。さらに、日程の途中でコンビニに立ち寄り、急遽更新が必要になったケアプランを印刷する場面も目撃しました。これは、朝一番で訪問する予定の利用者のサービスが変更になり、新たに計画したケアプランに同意を得る必要があったためです。

この瞬間を通して、松本さんが毎日向き合っている事務作業の現状とその膨大な量を直接感じ取ることができました。車内での利用者情報の更新から、予期せぬケアプランのコンビニでの印刷に至るまで、ケアマネジャーの業務はオフィス内でのデスクワークだけにとどまらず、移動中を含む多様な状況で進行するという実態に直面しました。我々が想像していたケアマネジャーの仕事(事務所での書類作成や計画の立案、そして利用者宅を訪問する際に準備された資料を携えてのモニタリング)は、実際にはもっと多岐にわたり、状況に応じた迅速な対応が求められていることを学びました。松本さんの日常業務を垣間見ることで、ケアマネジャーが直面する課題の複雑さや、それらに対処するための取り組みが、より明確に理解できました。

そこからも、30分の訪問と30分の移動を繰り返し、6件のご利用者宅訪問と社内会議に同席させていただきました。

訪問の際、松本さんは利用者の状況を確認し、ヒアリングを行いながらタブレット上で現在のケアプランを参照してモニタリングを実施していました。カイポケを活用することで、松本さんが効率的に情報を管理し、ケアマネジメントの質を向上させる一助となっている様子がうかがえました。

また、ある訪問先では、急に状態が悪化した利用者さんに対して、松本さんがプランの変更や福祉用具の追加提案を行っている場面がありました。利用者さんは、松本さんの提案に対し、「松本さんが言うなら、それが一番いいんだろうね」と信頼を込めて返答していました。このエピソードからは、松本さんと利用者との間に築かれた深い信頼関係の存在が伺え、その信頼がケアプランの適切な遂行を可能にしていることがわかりました。

実際に松本さんの日常業務に同行したことで、介護現場のリアルな声や、カイポケの使用状況やニーズについて深く理解することができました。

訪問に参加できなかったチームメンバーには、Slackを通じてリアルタイムで報告を行い、全員が一体感を持って1日密着のプロジェクトに取り組めるようにしました。また、この体験をもとにした資料(下記画像参照)をまとめることで、具体的な問題解決に向けた議論を深める土台となりました。

当日のタイムライン

コミュニケーションの実態

特に印象的だったのは、電話が依然として重要なコミュニケーション手段であったことです。松本さんは、コミュニケーションツールの導入によって電話対応が8割程度削減されたと感じているとおっしゃっていたのですが、実際には1日に17件の架電と3件の入電がありました。この数字は決して少ないとは言えない数字でしょう。このギャップは、実際の現場を訪れ、日々の業務を観察することの重要性を浮き彫りにしました。

ケアマネジャーにとって、電話がなぜ依然として重要なコミュニケーション手段であり続けるのか、その理由は多岐にわたります。例えば、緊急の連絡や高齢者との対話など、直接的なやり取りを求める場面が多いためです。コミュニケーションツールは効率を大幅に向上させることができますが、ケアマネジャーの業務の性質上、完全に電話を置き換えることは困難だと再認識することができました。

プロダクト改善への洞察

この体験を通して、ケアマネジャーの仕事の全体像や、彼らが直面している具体的な課題を深く理解することができました。また、日常業務の中でカイポケがどのように利用されているか、どのようなサポートがさらに必要なのかについても、新たなインサイトを得ることができました。これらの学びは、今後のプロダクト開発において非常に貴重なものとなり、ユーザーにとってより価値の高いサービスを提供していくための重要な指針となります。

コミュニケーションの実態に関しても、電話対応の削減という初期の期待とは異なり、ケアマネジャーにとって電話が依然重要である理由を理解することができました。この点は、カイポケの機能改善や新機能の開発において、重要な考慮事項となります。

今回の訪問では、カイポケのプロダクトマネージャーであるキム ダソムも同行してくれました。私たちは、松本さんの日常業務を観察し、実際の使用状況やニーズについて深く理解することができただけではなく、共通の経験を共有することで、プロジェクト内でのコミュニケーションがよりスムーズになり、「あの時のあのケースのこと」を話題に出すだけで、具体的な状況を思い出し、解決策について話し合えるようになりました。

おわりに

今回のような現場密着の体験は、プロダクト開発を行う上で不可欠なプロセスであり、ユーザーのリアルな声を直接聞き、そのニーズに応えることができるサービスを提供するための基盤となります。今後もこのような活動を継続し、介護業界全体の課題解決に貢献していく所存です。

私自身、元々介護業界に10年在籍していたので、業界への想いは強く、介護業界にある課題を解決したいと常々思っているのですが、改めて、松本さんのようなケアマネジャーの皆さんに役立つプロダクトを作っていきたい!という強い意欲を持ちました。

最後に、この取り組みやブログとして掲載することを快諾してくれた松本さん、および訪問させていただいた全ての方々に心からの感謝を申し上げます。ありがとうございました!