『プロダクト・レッド・オーガニゼーション』読書会を開催しました:カイポケ開発チームでの読書会の紹介

はじめに

はじめまして。エス・エム・エスで介護事業者向け経営支援サービス「カイポケ」の開発をしている古川です。今回はエス・エム・エス内で行っていた『プロダクト・レッド・オーガニゼーション』読書会の取り組みを紹介します。

エス・エム・エスでの読書会

エス・エム・エスでは読書会が数多く行われています。チーム内で実施しているものもあれば、チームを跨いだ有志での会もあります。カイポケの開発チームは現在リモート中心で業務を行っているので、読書会もリモートで行っています。本記事でご紹介する読書会もリモートワークが主体になってから生まれた読書会です。

『プロダクト・レッド・オーガニゼーション』とは

読書会の話に入る前に、『プロダクト・レッド・オーガニゼーション』(以下、本書)について簡単に内容を紹介します。

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本書はPendoの共同創業者兼CEOであるトッド・オルソン氏の著書で、原著は2020年、日本語の翻訳書は2021年10月に発売されました。本書ではプロダクトを通して顧客の獲得と維持、拡大を行う組織をプロダクト主導型組織と呼び、そのような組織がどのようにプロダクトからデータを収集し、意思決定を行っているかについて解説をしています。

私の所属するカイポケの開発チーム内で、ロードマップの作成や優先順位づけにあたって、利用データをこれまで以上に重視しようという意識が高まっていたこともあり、この書籍に興味を持ちました。

『プロダクト・レッド・オーガニゼーション』を読書会で読むことになった経緯

本記事でご紹介する読書会は、2021年4月頃から現在の形式で活動をしています。エンジニアだけでなく、プロダクトマネージャーなども参加して一緒に本を読んでいるのが特徴です。

読書会で読む本はそれぞれが候補をいくつか挙げ、最終的には参加者全員の話し合いによって決めています。明確な選定基準はないのですが、技術一辺倒の本よりも、エンジニアとプロダクトマネージャーがそれぞれの立場で読むことができ、みんなで色んな話をするきっかけになるような本を選んでいます。

そのような経緯で、これまでにこの読書会で読んできた本は以下のとおりです。

プロダクト系の読書会と銘打っているわけではないのですが、並べてみるとプロダクトに関する書籍が多いことに気づきます。

読書会の進め方

Slack上で通話をしながら行っています。進め方は以下の通りで、これを1時間ひたすら繰り返します。

  • 読む範囲(数ページ程度)を決める
  • それぞれが黙々と読む
  • 読んでいる間に生まれた疑問点や感想をesaに書き出す
  • それぞれが読み終わったところで、出てきた疑問点や感想について議論する
  • すべて話したら次の読む範囲を決める

実際に行われた議論の例

以上のような進め方で本書を読んでいる中で、実際に行われた議論の例を紹介します。

『プロダクト・レッド・オーガニゼーション』は、さまざまな視点から幅広いプロセスについて、非常に具体的に記述しているため、「自分たちのプロダクトで考えるとどうなるだろう?」という問いが生まれやすかったです。

例えば無料トライアルの効果的な事例として、ガイド付きのセルフサービス体験が紹介されています。トライアルの中でプロダクトの価値を最大限に感じてもらうため、そこに至る準備や設定を省略し、架空のテストデータとウォークスルーのプログラムを用意することで、より短い時間で効果を感じてもらえるようになったという事例が紹介されていました。

この事例紹介を読んだあと、自分たちのプロダクトであるカイポケのトライアルについての議論が生まれました。介護サービスの提供は1ヶ月単位で行われます。そのため給付管理業務がカイポケでどこまで効率的になるのかを実感していただくためには、最低でも1ヶ月という期間が必要になります。カイポケではこの1ヶ月単位で行われる業務が円滑に行えるように設計をしています。

しかし、前述のウォークスルーの例を読んで、カイポケ内で有効性を十分に伝えられていないのではないかという疑問が生まれました。そこで、カイポケであればどのようなウォークスルーが考えられるかについて議論しました。

  • 1ヶ月の流れを掴めるようなウォークスルーはどのようなものが考えられるのか。
  • そのために準備しておくデータは何か。
  • 使い始めのユーザーがつまずきやすいポイントはどこなのか。
  • これらを実現するためにはどのような環境が必要か。
  • 現状の仕組みで実現するためにはどのような設計が考えられるか。

このような論点に加えて、実際の利用状況のデータ等も参照しながら、エンジニアとプロダクトマネージャーが立場を跨いで議論することができました。

読書会を終えての感想

読書会を通じて、本書で出てくるアイデアを自分たちのプロダクトだったらどのように適用できるだろうかと考える機会が度々ありました。

また、データ分析やメトリクスに基づく意思決定の重要性が繰り返し説明されていたことも印象に残りました。業務の中でもメトリクスの整備や振り返りを進めていたところだったので背中を押してもらえたような気がします。

以下では、私の感想だけでなく、読書会の他の参加者の感想も紹介します。

プロダクトマネージャーの感想

  • 「正しいもの」を作るためにデータを活用すること、プロダクトチームとカスタマーサクセスチームの連携、価値の無い機能は捨てるなど、全体的に取り組み始めたことや今後やりたいと思っていることに関連した内容が多く刺さる本だった。
  • 顧客の獲得からプロダクトの改善、戦略の立案からプロダクトオプスの部分まで幅広い観点で書かれていたので、今後のガイド的に使っていけると思った。

エンジニアの感想

  • 顧客満足度やNPSといったよく目にする指標について、それを利用する文脈・目的を含めて説明されていて、役に立った。
  • プロダクトを改善していくための仕組みをプロダクト自体に色々と組み込んでいくのがよいという話が多々あり、そのようなことを行おうとしていくと、システム開発の仕方にも変化が出てくるのではないかと感じた。

終わりに

現在読書会では『プロダクトリサーチ・ルールズ』を読んでいます。読書会のesaやSlackから興味を持ってもらい、新しいメンバーも加わりました。単純に参加者が増えただけでなく、カイポケではないプロダクトを担当してるエンジニアや別チームのプロダクトマネージャーが参加してくれるようになりました。

このような読書会だけでなく、エス・エム・エスでは普段からプロダクトマネージャーとエンジニアが近い距離で働いています。役割によって壁を作ることなく、共に取り組みながらより良いプロダクトを提供できるよう努力していきます。