オブザーバビリティ登壇マラソン:反復がもたらした予想外の収穫

介護/障害福祉事業者向け経営支援サービス「カイポケ」のリニューアルプロジェクトでSREを担当している加我 ( @TAKA_0411 ) です。SREチームの中では主にモニタリングとオブザーバビリティに関する整備や調整を担当しています。

最近社外で登壇する機会がありまして、オブザーバビリティに関する内容の登壇をいくつかしてきました。同一テーマで複数回の登壇をするのが初めてということもあり、そこで得られたものや気付きについて振り返ってみたいと思います。

直近で登壇した / 登壇するイベント

まずは直近登壇したイベントについてそれぞれ紹介していきます。

1. JAWS PANKRATION 2024

jawspankration2024.jaws-ug.jp

開催日
2024/08/24 (土) 12:00 PM 〜 2024/08/25 (日) 12:00 PM

登壇形式
プロポーザルによる採択を経てオンラインにて登壇

参加者数
約600人

JAWS PANKRATION 2024は2024年8月に開催されたAWSユーザーグループのイベントです。24時間連続でオンライン開催され、国内外のエンジニアが登壇するグローバルイベントと位置づけられていることからスライドは英語であることが必須となっています。

登壇希望者はCall for Proposalsを確認したうえでプロポーザルを提出し、運営チームの選考を経て採択されるというカンファレンスでよく見る形式となっています。私は下記の内容でプロポーザルを提出し、無事採択いただく運びとなりました。

# タイトル
How to achieve full-stack Observability with AWS
(フルスタックオブザーバビリティをAWSで実現する方法)

# 概要
In modern distributed complex systems like microservice architectures, observability is essential for quickly identifying issues.

While understanding the concept of observability as proposed by the CNCF, I will suggest methods to achieve full-stack observability utilizing AWS services.

マイクロサービスアーキテクチャのような近年の複雑な分散システムでは、問題を迅速に特定するためにオブザーバビリティが不可欠です。
CNCFが提唱するオブザーバビリティの概念を理解しつつ、AWSのサービスを利用してフルスタックオブザーバビリティを実現する方法を提案します。

持ち時間は15分、オンラインイベント故に参加者とのインタラクティブなやり取りは難しいと考え、前半はCNCF (Cloud Native Computing Foundation) のWhitepaperを紹介しつつクラウドベンダーによるフルスタックオブザーバビリティの説明をし、後半ではAmazon CloudWatchでの実現方法の話をしています。

既にセッション資料とアーカイブが公開されています。

jawspankration2024.jaws-ug.jp

2. JAWS-UG函館 勉強会 vol.14

jawsug-hakodate.connpass.com

開催日
2024/10/05 (土)

登壇形式
登壇枠への応募を経てオフラインにて登壇

参加者数
19人

JAWS-UG函館はその名の通り北海道の函館市近郊で開催されているJAWS-UG (AWS User Group – Japan) の勉強会です。私は2024年6月に地元北海道 (札幌) へUターンしたということもあり、北海道つながりで登壇しませんかとのお誘いがありまして登壇する運びとなりました。

参加者の属性と登壇内容についてヒアリングしてみたところ初学者向けだと嬉しいという話があり、JAWS PANKRATION 2024の資料を一部改変して初心者でも理解しやすいよう心がけました。具体的には序盤のCNCFやフルスタックオブザーバビリティの説明を削って「オブザーバビリティとは何か」「モニタリングとは何が違うのか」といった内容に差し替えています。

3. JAWS FESTA 2024 in 広島

jawsfesta2024.jaws-ug.jp

開催日
2024/10/12 (土)

登壇形式
プロポーザルによる採択を経てオフラインにて登壇

参加者数
343人

JAWS FESTA 2024 in 広島は2024年10月に広島で開催されたJAWS-UGによる全国規模のイベントです。JAWS-UGは年に2回全国規模のイベントを開催していて、春に都内で開催されるのがJAWS DAYS、秋に地方で開催されるのがJAWS FESTAです。

登壇希望者はCall for Proposalsを確認したうえでプロポーザルを提出し、運営チームの選考を経て採択されます。JAWS PANKRATION 2024と同じ形式ですね。私は下記の内容でプロポーザルを提出し、11倍 (!!) という倍率の中で無事採択いただく運びとなりました。

# タイトル
Amazon CloudWatchで小さく始めるWebサービスのオブザーバビリティ

# 概要
https://jawsfesta2024.jaws-ug.jp/sessions/timetable/D-1/

採択されたのがテクノロジートラックで持ち時間が20分ということもあり、JAWS-UG函館でお話した内容に加えて「Amazon CloudWatchの良いところ・頑張ってほしいところ」「Amazon CloudWatchとObservability SaaSの比較」を盛り込んで内容を調整しました。自分としては一連の内容の完成形のつもりで登壇に臨みました。

セッション資料は既に公開済みです。

speakerdeck.com

4. 第39回 JAWS-UG札幌 勉強会 〜JAWS FESTA 2024 in 広島 re:Cap〜

jawsug-sapporo.connpass.com

開催日
2024/11/19 (火)

登壇形式
登壇枠への応募を経てオフラインにて登壇

参加者数
20人

JAWS FESTA 2024 in 広島に参加していたJAWS-UG札幌のメンバーから「運営スタッフを担当していたのでセッションを聞けなかった」「タイムテーブルが被ってしまい聞きたかったセッションを聞けなかった」などという話があり、であれば札幌でre:Cap (振り返り) として登壇の再演をやりましょうという流れから発生したのがこちらのイベントになります。

再演ということで基本的にはJAWS FESTA 2024で話した内容をそのまま話す予定でしたが、イベント参加者と話して得られた気づきを反映したものをお話します。

登壇内容の振り返りと気付き

直近の登壇は全て同じテーマで「オブザーバビリティとは何か、Amazon CloudWatchでどのように始めるのか」です。イベントと参加者の属性に応じて若干内容を調整はしますが、ベースとなる内容はほぼ一緒です。

同じ内容での複数回の登壇には当初懐疑的でしたが、いざやってみるといくつかのメリットを感じることができました。

1. 発表内容の洗練

似た内容で複数回登壇することが過去なかったので気づかなかったのですが、繰り返してみると下記のような色々な反省点が見えてきます。

  • 「スライドの内容が前後で微妙に繋がっていない」
  • 「内容を補完するための図が必要」
  • 「前提となる話があったほうがよい」
  • 「結論がぼやけている」

資料は事前に社内でレビューしてもらい自分自身で何度もリハーサルしていますが、発表当日になってリハとは環境が変わることで違和感に気づいてしまうケースがありました。これは純粋に私自身のプレゼンスキルの未熟さだと思います。

しかし今回は一連の登壇を経て資料と発表のアップデートを行い、最終的には自分でも納得できるようなものに近づけた気がします。特にJAWS FESTA 2024では参加されていた方のブログで「20分という短い時間でしたがプレゼン内容が洗練されていた」という評価をいただくことができました。

2. 理解の深化

アクティブ・ラーニングにおいては理解度を深めるには実際に説明してみることが重要であると言われています。資料作成のために調査する → 登壇する → 参加者と話す → 気付きを得る → また調査する → 登壇するというループを経てオブザーバビリティへの理解が深まり、ようやく背景など含めて説明できるようになりました。

一連の登壇により資料をブラッシュアップする過程で話の根拠や背景を改めて調べ直してみたり、概念やサービスにアップデートがあるかを確認してみたり、他に参考となる資料がないかを探すことで知識を定着し理解が深まることに繋げられたと考えています。

発表内容に明確な間違いが無い限りは過去の登壇資料を見直すことがなかったのですが、今後は意識的に見直していくことで近いメリットを得られるかもしれません。

まとめと今後の展望

ブログタイトルにある「オブザーバビリティ登壇マラソン」のとおり、ここ数ヶ月間でオブザーバビリティに関する内容での登壇を複数回行ってきました。オブザーバビリティの考え方や実践方法、各クラウドベンダーのオブザーバビリティへの取り組みに関する発表を行い、資料のブラッシュアップを経て多くの知識を得ることができました。

今回の一連の登壇では、改めてオブザーバビリティに関する知識の継続的なアップデートは必要不可欠であること、特定のテーマでの発表を続けることで理解が深まること、興味のあるテーマを見つけたら繰り返し登壇してみることといった学びを得ることができました。

一方でサービス特有の課題、苦労、困難、失敗、解決といった他の人にはできないリアルな内容での登壇はまだできていません。オブザーバビリティやAmazon CloudWatchのような一般的な内容の登壇にも価値はあると思いますが、やはりサービスやドメイン固有の苦労話こそ面白さと価値があると私は考えています。ですので、今後はカイポケのリニューアルにおける苦労話や失敗談などを話せるようにネタ探しや挑戦をしていく次第です。

もし登壇の場や機会がありましたら、加我のTwitter (X) アカウント ( @TAKA_0411 ) まで気軽にお声がけ下さい。

おわりに

株式会社エス・エム・エスは「継続可能な日本の未来をつくる」テックカンパニーを目指し「高齢社会に適した情報インフラを構築することで人々の生活の質を向上し、社会に貢献し続ける」をミッションに掲げて様々な事業を展開しています。

ヘルスケア・医療・介護・シニアライフ業界の課題解決やバーティカルSaaSの開発に興味のあるSREの方がいらっしゃいましたらぜひお話しましょう!