プロダクトオーナーの魅力とは?元セールス出身者が社内転職してみて思う事

はじめに

介護事業者向け経営支援サービス「カイポケ」のプロダクトオーナーをしている 岩下 真志穂 と申します。 入社して約4年間ビジネスサイドでセールス業務をしていたのですが、2023年中頃に入ってプロダクト開発の知識がほぼゼロに近い状態で異動をして、プロダクトオーナー(PO)をすることになりました。

どんな方に読んでほしいか

そんな私がこの約半年間でどういう課題に直面し、それをどう解決してきたのかを本エントリーで共有したいと思います。この記事は

  • ビジネスサイドや事業部での経験はあるが、全くの異職種へ未経験で転向した人の異動エントリが読みたい!
  • Vertical SaaSを提供しているエス・エム・エス/カイポケ事業において、プロダクトオーナーがどんなことをやる人なのか気になる!
  • ドメインエキスパートがプロダクトマネージャーを目指したいときに、どういうスキル獲得が必要なのか知りたい!

といった方に、何か一つでもお役立ちできればと思って書いています。

そもそもPO(プロダクトオーナー)とは?

エス・エム・エスではプロダクトマネージャー(以降PdM)とプロダクトオーナー(以降PO)をロール=役割として区別しており、平たく言うと以下のような違いがあります。

  • PdM=プロダクト全体(マルチプロダクト)のビジョンを明らかにし、成功させるためにチームをまとめる人
  • PO=シングルプロダクトの開発においてユーザーのWhyを考える人

どちらも「いいプロダクトを作るために汗をかく人」という点では同じなので、エス・エム・エスとしてもそこに役職としての優劣をつけていないのですが、上記のように見ている範囲(マルチプロダクトか、シングルプロダクトか)に違いがあります。
また、実際に私が携わっているカイポケリニューアルプロジェクトにおいては、PdMはリニューアルするカイポケのプロダクト全体を見ているのに対し、POである私はその中の細分化された機能であるシングルプロダクトの「ケアマネアプリ」を見ているといった違いが出てきます。

なぜ社内転職を選んだのか

ここまで読んでくださって「ちょっと待ってよ岩下さん!異動エントリと思ってこの記事読んでるんだけど!!」とお思いの方がいらっしゃるかもしれません。ご安心ください、今からその話をします。
先述の通り、元々ビジネスサイドに4年間いたわけですが、なぜ畑違いのプロダクト開発部に異動したのかというと、現場経験があるからこそ分かるユーザーの「不」(不便・不快・不満・不安)に対して、開発という分野からチャレンジしてみたくなったからです。
ユーザーのソフト面での「不」とこれからリニューアルするカイポケのハードの特性をフィットさせ、ひいてはユーザーにとってクリティカルな課題の解決をプロダクト自身を通してしていきたいと強く思うようになりました。

セールス視点から見たプロダクトへの「不」

「不」の例を挙げて説明します。
カイポケには請求ソフトとしての機能に加えて、経営状態を見える化するための機能の一つとして「売上管理」の機能があるのですが、この機能について以下のような「不」がありました。

  • 現状:「売上管理」機能は月次でしか見れない
  • 顧客ニーズ:日次で売上を把握したい
  • 運用 提案:日次計算ができる売上シミュレーション(エクセル)を独自作成
  • 「不」ポイント:複雑な加算が絡む介護請求においては「あくまで概算」のシミュレーションしか提供できない

実際に社内転職してみて

最初に感じたのは「安心」でした。
スクラムイベントや開発知識についてのオンボーディングの場があったこと、ワーキングアグリーメントが言語化されていること(これも新しい方がジョインされたらPOやプロジェクトリーダー主導でチームで議論しどんどんアップデートしていきます)、外部講師からの研修が設けられていること、などなど未経験でも安心できる体制があることはありがたかったです。
また、今あるプロダクトに対してユーザーのニーズを知っている人が開発部署に社内転職することは、プロダクトを開発していく上で価値があることだという実感はあります。自分の中に、ある意味ユーザーについてのビッグデータがある状態なので、開発サイクルで検証を重ねる際にも「どこに課題があるのか」や「どこをユーザー価値にするのか」が判断しやすいからです。
ドメイン経験があって社内異動を検討している方がいたら、自分の介在価値がどこにあるのか参考にしていただけたらと思います!

エス・エム・エスでの「社内転職」というキャリアパス

上記のような思いがあるものの、事業部経験者がプロダクト開発部へ未経験で異動する、というのは社内でもほぼ初めてでキャリアパスを開拓する難易度は高いだろうな、と予想していました。ですが、実際に具体的に動いてみるとそんなことはなく、事業部長の園田さんは異動や新しいチャレンジは歓迎!という考えだったので、面談を重ねて異動が決まりました。(ちなみに、事業部側には”部門の最高責任者とも誰でもカジュアルに1on1できる仕組み”があって、そこでフランクに話せたのも良かったと思ってます。)
ちなみに私の場合、社内転職に向けて以下のようなことを整理してみました。

  • 自分が持っている課題は、今の部署では解決できないのか
    (具体的な打ち手を考えるとしたらどういうアイディアがあるか)
  • 異動先の部署ではなぜその課題を解決できると考えるのか
  • 異動後、今の自分が持っているどういうスキルが活用できそうか

POの魅力

難しさを感じる部分

ビジネスサイドからの異動だったことで当初感じた難しさは「これまでと目標(仕事のゴールやKPI)が全く違う」部分でした。

  • ビジネスサイド:進捗管理(決められたKPI=数字を達成する、タスクを早く終わらせる)が大事
  • プロダクト開発:プロセス管理(ベロシティはみるが量的には評価せず、不確実性を消しながら目指すゴールに向かえているかをチェックする)が大事

スクラムという概念を導入した結果、個人としての達成を目指すのではなく、スクラムを組んでチーム全体でスキルや知識を補いながら一緒にちょっとずつ進んでいくということを知りました。
また、開発知識・デザイン知識などが一定ないとスムーズに業務を進められないので、本やポッドキャストなどから常にインプットはしています。今はドメインモデリングの勉強をしているところです。

楽しさ・面白さを感じる部分

一方でやりがいを感じる部分もたくさんあります!
新しい職種POに挑戦してみて、これまでの4年間に現場ユーザーと相対する中で「今のプロダクトでは解決が難しい」部分について考え続けていたことが、一つ一つ解消できていることに充実感と達成感を感じています。
特に、私が携わっているカイポケのリニューアルプロジェクトは「介護業界」というドメイン知識が高度に必要な分野のため、これまでの経験・知識を活かして、エンジニアやデザイナー向けの社内勉強会を定期的に開催しています。物事を型化することは元々好きだったのですが、それを勉強会という場で価値としてコンスタントに発揮できるのは嬉しいですし楽しいです。

エス・エム・エスならではの楽しさもあります。エス・エム・エスの事業内容は大きく4つ(ヘルスケア・医療・介護・シニアライフ)ありますが、カイポケと親和性が高い事業もあります。
外部に頼んだら時間もコストもかかるような調査がすでに行われていて結果を共有してもらえたり、会社のリソースを使った検証やナレッジ共有ができるのはすごいことだと思います。
逆に、カイポケ側からの情報提供もあります。例えば、アドバイザリー契約を結んでいるユーザーやそのコミュニティを活用し、シニアライフ領域のケアマネドットコムなど他事業部へ接点を繋ぐことでエス・エム・エス全体でプロダクトの改善に向けて動く取り組みもしています。

エス・エム・エスの事業領域と展開サービス

まとめ

以上、この半年間の私の経験をもとに、未経験からの開発部への社内転職やエス・エム・エスにおけるPOという職種、カイポケリニューアルプロジェクトの取り組みを紹介させていただきました。
Vertical SaaS特有の課題を解決しつつドメイン知識やユーザー理解をしていくプロセスに疑問があった方や、全くの異職種への転向に不安を持っている方が、この記事を読んで安心感を持っていただけたら幸いです。