エス・エム・エスのプロダクト開発組織では、メンバーそれぞれがコミュニティを代表する一人として考え行動する「あなたがコミュニティ」というバリューを大切にしています。 このバリューを同組織の人事という立場から実践しようとしているのが、プロダクト開発部採用・組織開発支援グループの @fkc_hr です。ほとんどのメンバーが技術職であるプロダクト開発組織に対し、深代さんはどのような形でコミュニティづくりに貢献しているのでしょうか。具体的な取り組みやそのモチベーションについて、深代さんに聞きました。
正解がないなか、自分たちの力でカルチャーをつくっていく
——ご経歴と普段の業務内容について教えてください。
新卒で人材系ベンチャーに入社し、インターン時代からIT領域の人材紹介の営業を担当していました。その後、支店の立ち上げからクローズ、新規事業の営業なども経験しました。一貫して、成果を出して介在価値を見出さないと、支店が存続できない/顧客に価値提供できない/仲間を増やせない/事業が続かない……という意識を持っており、顧客志向と達成志向が身についた時期だったと思っています。そんな時に、メンバーの成長や顧客満足度の向上なども含め、組織や事業の継続性や成長に貢献できる仕事にチャレンジしたいと思うようになり、転職活動をしているなかで、エス・エム・エスは人事の側面から横断的に関われるというオファーをいただき、転職を決めました。
現在は、プロダクト開発組織の採用業務をメインで担当しています。採用における母集団形成のための媒体活用や人材紹介会社との連携、選考体験を向上させるための選考オペレーションの設計、適切な面接官・面談官のアレンジなどを社内のEM陣や各メンバーとコミュニケーションを取りながら進めています。また、2023年度から所属しているグループ名が「採用・組織開発支援グループ」となったことで、採用だけでなく、広報活動として当社プロダクト開発組織の外部発信も推進しはじめており、前年度から徐々に自分自身も関わらせて頂けているため、より社内・社外に対して当社プロダクト開発組織の良さを伝えていけたらと思っています。
——顧客志向や達成志向が根底にあるとのことですが、エス・エム・エス入社後、そうした価値観が変化した、あるいは理解が深まった部分はありましたか。
扱える”変数”が増えたように感じています。前職では自身の顧客への貢献や、自身の目標達成という範囲で仕事をしていましたが、エス・エム・エスにおいては自身が担当しているプロダクト開発の採用・組織開発だけ考えればいいのではなく、事業や他複数の組織も踏まえた全体最適とのバランスを複合的に思考する必要があり、捉えないといけない変数が必然的に広がったように思います。そのため、分かりやすい貢献や達成ではなく、本質的に会社や事業成長につながる「成果」の捉え方が変わったように思います。
——「あなたがコミュニティ」というプロダクト開発組織のバリューをどのように解釈されていますか。
「ボトムアップであれ」という意味合いに受け取っています。たとえば、技術責任者の田辺さんからは、組織全体に対し「どう思いますか」「意見をください」といった形で問題が提起され、社歴やロール、職種関係なく意見を言い合える雰囲気があります。上で決まったことが下に降りてくるという体制ではありません。
私のなかでは、人事部内でよく言われている「風土はこれまでの取り組みによってできてきたもの、カルチャーはこれからつくっていくもの」という表現がしっくりきています。正解がないなか、自分たちの力でカルチャーをつくろうとしていくことが「あなたがコミュニティ」ということなのだと解釈しています。
原動力は「入社してくれた方にもっと活躍してほしい」という想い
——「あなたがコミュニティ」というバリューに関連して、どのような活動をされていますか。
たとえばボトムアップでフラットに意見を言えるように、というカルチャーに、新入社員の方々も早期に馴染めるように「同期会」というslackチャンネルを立ち上げました。
そこでは、気軽にちょっとした困りごとを相談できるような場として、例えば「経費申請の仕方が分からない」「こういう資料が欲しい」といったことを発信してもらい、人事側から早めにこれらの困りごとに対応できるようにしています。 またオンラインミーティングの場を設けて、同期同士の自己紹介や所属チームの紹介ができるようにもしています。今後はメンバーの増員に合わせて四半期ごとに同期会をつくっていこうと思っています。
特に2023年4月入社のメンバーはまさに私が採用を担当した人たちなので、各メンバーの経歴や特徴などを把握しながら、メンバー同士がつながるきっかけとなるコミュニケーションを意識しています。
——同期会のコミュニケーションにおいて、気をつけているポイントがあれば教えてください。
前職での仕事のスタイルによって各メンバーの考え方は違いますし、喋るのが好きな人もいれば、あまり自分からは発言したくない人もいるなど、それぞれに個性があります。コミュニケーションのルールをつくってそれをメンバーに押し付けるのではなく、状況に応じたコミュニケーションを取ってもらえたらと思っています。
——そうした取り組みの原動力はどこにありますか。
自分が携わった採用活動を通して入社してくれた方にもっと活躍してほしい、そのための力になりたいという気持ちが根底にあります。もともと人が好きなこともあり、単純にそれを楽しく思えるところも大きいのかもしれません。人事として採用活動を担当しているのは、プロダクト開発組織のなかで私1人だけです。チームに所属していない分、いろんなところで盛り上がっているお祭り騒ぎに参加している感覚がありますね。
「社内駆け巡り」で、事業・プロダクト・人の理解を深める
——ほかにはどのような活動をされていますか?
色々なことを行っていますが、あえて名前をつけるなら「社内駆け巡り」という活動です。計画的に実施しているわけではありませんが、面接に同席したり、採用に関係ありそうな社内のミーティングに参加したり、社内のSlackチャンネルを巡回したり、オンラインホワイトボードサービス Miroの付箋を好きなチームに貼りに行ったりなど、さまざまなところに顔を出すようにしています。
——そうした取り組みを主体的に行うことは、重要性を理解していてもなかなか難しいと思います。深代さんのなかで何がモチベーションになっているのでしょうか。
そもそもエス・エム・エスの採用は、会社や事業の継続、成長のために行っているものです。今、必要な人を採用をするためには、どのような事業やプロダクトが運営されていて、どのような人がどういう仕事をしているのか、深く理解する必要があると思っています。誰かに依頼されたからではなく、自分の理解のために積極的に情報を取りに行くようにしています。
もともと人事の仕事に就くことを目的にしてエス・エム・エスに入社したわけではないというのも、積極的に社内駆け巡りができている要因の1つかもしれません。どうすれば会社が伸びるのか、自分が事業のためにしなければいけないことは何か、人事という立場から考え続けていたところ、自ずとこうした行動を取るようになっていました。
前職でも社内外の情報を取りに行く意識は持っていましたが、積極的に人に話を聞くところまではできていなかったように思います。ただ、エス・エム・エスに入って以来、自分がやろうとしている採用や組織改善などは1人だけでは達成できないと考えるようになったので、いろんな人に協力してもらおう、わからなければとにかく人に聞きに行こうという意識が強くなりましたね。会社の雰囲気的に何でも聞いたら教えてくれるし、論理が通っていることも、理解を深める面白さだなと思っています。
「深代に聞けば何か答えてもらえるんじゃない?」と思ってもらえるように
——そのほかの取り組みについても教えてください。
RubyKaigiなどのコミュニティイベントへ参加しています。登壇手続きや協賛関連の仕事だけでなく、LTなどを聞いたり、他社の人事の方と話をしたり、人と人をつなぎ合わせる役割を担ったりと、その場にいるからこそできる動きをするようにしています。こうして社内外の方に「エス・エム・エスのプロダクト開発組織の採用をしている人はあの人だ」と知ってもらえることが重要だと考えています。
また、採用広報の仕事の一環として技術ブログの運営にも関わっています。「この人ならこういう記事が書けそう」と案を出したり、同期会のメンバーに入社エントリを書いてほしいと打診したりなどして、記事の企画をサポートしています。
——一連の活動を通してどのような効果が出てきていますか。
採用にどれだけ効果があるか定量的に測るのは難しいですが、メンバーからいろんな質問に打ち返せるようになったり、リファラル採用の相談を受けるようになったりと、「深代に聞けば何か答えてもらえるんじゃない?」というイメージを持ってもらえるようになってきたと感じています。
——これまでの活動に対する周囲からの反応はいかがですか。
デザイナーを対象とした社外向けのイベントを企画した際、登壇者が作成したイベント資料へフィードバックを行ったのですが、「ちゃんとつっこんで指摘できるのは良いこと」などとフィードバックをいただきました。自分としてはあまり意識せずやっていることなのですが、自分の役割に制限を設けず、誰かのためになることをしようという姿勢が認めてもらえているのだと感じた事例です。
「採用に関わったメンバーの成果が出てくる日が楽しみ」
——現在、課題に感じられている部分や苦労されていることなどはありますか。
今私が取り組んでいるような活動は、このままだと属人化してしまうリスクがあると思っているので、チームとして機能できるようにしていきたいです。そのためには、やはり人事の仲間が欲しいですね。また、長期的な目線で自身の活動を捉えていく点も課題の1つだと感じています。
——最後に、今後の展望をお聞かせください。
これまでの中途採用と並行して2025年度の新卒採用に向けて動こうとしているところです。シニアのエンジニアと若手エンジニアでは当然コミュニケーションの内容も変わってくるので、より多くのコミュニティに伝わるような視点を持ってエス・エム・エスの魅力を伝えていく必要があると考えています。
また、私が人事として採用に関わった社員もすでにチームに馴染んでいる様子や、さまざまな場所でのフィードバックは聞いているのですが、もう少しすれば、よりプロダクトや事業に貢献している姿を社内外に発信していける事例がたくさん出てくるはずです。そうした成果が見届けられることを、今からとても楽しみにしています。