ユーザー業務とシステムに対する知識獲得のためにチームとして実施していること

介護事業者向け経営支援サービス「カイポケ」の開発をしている 橋本 宙 です。

本稿では私の所属する介護レセプトチームで実施している、「ユーザー業務とシステムに対する知識獲得に関する活動」を一部紹介します。

今回紹介する活動

介護レセプトチームは、カイポケの介護領域の開発を担当するチームです。

介護レセプトチームでは、3年に1度「介護報酬改定」という大きな制度変更に伴うシステム改修が発生します。(「介護報酬改定」についてはこちらの記事を参照してください)

「介護報酬改定」は、継続的にアップデートしている大きなシステムを、短い期間かつ限られた情報を解釈して対応しなければならないという特性があるため、チームとしてユーザー業務とシステムに対する知識のベースラインを上げていくことが重要だと考えています。

知識のベースラインを上げていくためのさまざまな活動を実施しているので、今回は以下の2つを紹介します。

  • ユーザーストーリーマッピングで業務理解
  • コードを読みフローを描くことで実装や処理の流れを理解

ユーザーストーリーマッピングで業務理解

「ユーザーストーリーマッピングで業務理解」とは、ユーザーの行動を時系列に書き起こすことでユーザーの行動を認識し、書き出していく中で出てきた疑問点を解消していくことで理解を深めていく活動です。

私たちのチームでは、「介護報酬改定」で手を加えそうな部分の業務知識が薄かったため、業務を整理し理解するためにユーザーストーリーマッピングを実施することにしました。

事前準備

  • どの業務について理解を深めるかの選定
    • 今回は「介護報酬改定」で影響を受けそうだが、メンバーの理解度が低い業務を選定
  • miroなどのオンラインホワイトボードツール
  • 業務の一般的な流れのわかる資料や本

進め方

  • エンジニアとPdMが全員参加で週に1時間確保し、始まりから終わりまでユーザーストーリーマッピングし終わるまで繰り返し実施
  • 業務の始まりから終わりまで描き終わったらドメインエキスパートを呼んで、読み合わせと疑問を解消する会を実施

工夫したこと

  • ドメインエキスパート不在の状態で書いたこと

    自分達で集めた資料を元に想像しながら書き起こしてみることで印象に残りやすいと考えていたため、わからないなりにアウトプットしてみました。

  • 全員で質問し合いワイワイ話しながら進めたこと

    開始時点では業務やその周辺の制度の理解度にばらつきがあったので、質問も交えながらゆっくり進める方針にしました。

  • 疑問がでてきたら付箋にメモを書きながら進めたこと

    ドメインエキスパートに聞きたいことを忘れないようにというのと、人数が多く全員で会話できる形ではなかったので付箋を書いて貼っておく形にしました。

  • ペアプログラミングのようにドライバーとナビゲーターとに役割分担をしたこと

    全く前に進まないことを防ぐために、ある程度詳しいメンバーがドライバーをやり、残りのメンバーはナビゲーターとして事前に用意した資料や本を使って補足したり、理解することに集中していたりしていました。

コードを読みフローを描くことで実装や処理の流れを理解

「コードを読みフローを描くことで実装や処理の流れを理解」とは、業務整理した部分に関わる機能のコードを読み現状の仕様や処理の流れなどをアウトプットしていく活動のことです。

該当機能の仕様について詳しい人がいない状態だったのと、「介護報酬改定」が短い期間で対応をしなければならないことを考えると早めに詳細を理解して「介護報酬改定」に備えたいと考え実施しました。

事前準備

  • グループ分けをしておく
    • 1グループ2~3名になるように
  • この活動を優先してよいという共通認識を持つ
    • 普段の業務もあるので時間が取れないことを避けるため

進め方

  • グループごとに進め方は一任
  • 2週間後に共有の時間を押さておく
とあるグループの進め方
  • まとめ方のイメージも擦り合わせられていないので、集まるタイミングだけ決めて個人で思い思いにコードや業務の資料を読みmiroに書き出す
  • 各々のアウトプットをみて会話しながら処理フローを書き出す
  • 処理フローに登場する処理1つ1つコードを読み、input/outputを整理
  • 制度の知識、現行システムの詳細な仕様などは適宜メモ欄に記入

工夫したこと

  • アウトプットイメージを決めすぎないこと

    アウトプットイメージに引っ張られて、それを作るためだったり認識合わせに時間取られたりするのはやりたいことではなかったのと、詳細の調査をしたいときにアウトプットイメージから考えると制約になってしまう可能性もあったのでアウトプットの指定はせずに進めました。

  • 少人数のグループ分けをしたこと

    「ユーザーストーリーマッピング」と同じように大人数で広く業務を理解するのではなく、処理をより深掘りできるように少人数で手を動かしやすい形で進めました。

  • 期限を設けたこと

    間延びしてしまい時間をかけた割に学びが少ないということを避けるために期限を設けました。

  • 成果物を共有する形式にしたこと

    共有するという活動を通して、共有する側も理解を深める機会になるし、共有を受けた側は知らなかったことを知ることができるようになると考え共有する時間を設けました。

この活動をやってみての感想

よかったこと

  • どの業務でどの機能をつかっていて、その機能のinput/outputが明確になったことで、改修時の影響がある程度わかるようになったこと
  • 介護レセプトチームではスキルマップを活用してチームの状況を可視化していて、チームメンバー全体の知識のベースラインがあがっているような結果になったこと
  • 「業務理解」で広く浅く業務を理解した上で「コードを読む活動」を実施したことで、全体像を掴んでから詳細に踏み込む形になり、コードが読みやすかったこと
  • 少人数で活動をすることで、遠慮や配慮から発言を控えたり後になってから発言したりするようなことがなくなり、質問や会話がしやすくなり理解を深めやすくなるということがわかったこと

課題

  • 今回紹介した活動はそれなりに時間を使う活動であり、全ての機能に対して同じようにやることが現実的ではないこと

この課題に関しては、チームメンバーのほとんどがわからない機能で、重要度も高く、今後手を加える可能性が高いものに絞って横展開をしていこうと考えています。

最後に

「介護報酬改定」に追従し、改定後も使えるシステムにすることはもちろん、顧客が求めているものを的確に提供するためにも、ユーザー業務とシステムに対する知識獲得に関する活動はさまざまなアプローチで続けていこうと思っています。