EMから見たエンジニア採用とメモリーパレスの効果

エンジニア採用の経路とは?

突然ですが、みなさんは現在お勤めの会社にどういったことをきっかけに入社しましたか?

  • リファラル(社員紹介)
  • エージェント紹介
  • ダイレクトリクルーティング
  • 企業の採用ページに直接応募
  • 求人広告
  • etc.

と、さまざまではないでしょうか。

それぞれのアプローチに特徴があり、一つで記事になるくらいの観点がありますが、今回はリファラル採用について考えてみます。

一般的にリファラル採用では下記のようなメリットがあげられることが多いと思います。

  • カルチャー・技術面でマッチしたエンジニアと出会いやすい
  • 現場エンジニアの生の声を聞いた上でカジュアル面談ができる(現場目線とエンジニアトップやマネージメント目線の両方をインプットにしていただける)
  • 転職意志が無い/薄いタイミングからお互いの情報を提供しあうことができる

いいですね。では、早速紹介してみましょう!といきたいところですが・・・

で、誰を紹介すればいいですか?

リファラル(社員紹介)制度を導入している会社も多いため、「良い人いたら紹介してください!」というのはかなりの方が言われたことがあるのではないでしょうか?

では、「紹介できる良い人」が自分の中に湧いて出てくるかというと、そんなことはありません。もちろん、友人・知人と一緒に食事に行ってて「実は転職しようと思っててさー」ということはあり得るのですが、なかなか自然に遭遇することでは無いと思います。

そこで、リファラルで仲間候補を集めるための手法にメモリーパレスと呼ばれるものがあります。採用に関わったことがある方は耳にしたことがあるかもしれません。

メモリーパレス(記憶の宮殿)とは?

このメモリーパレス(Memory Palace)ですが、元をたどるとリファラルのための手法というわけでもなく、座の方法(Method of Loci)などとも呼ばれる記憶術だとのことです。

Method of loci - Wikipedia

この記憶術のきっかけは、古代ギリシアの詩人シモニデスが、宴会場の天井が崩落するという事故に遭遇した際に、被害にあった人々がどこに座っていたかを記憶していて、身元を割り出すことができた・・ということにあったそうです。

一般的には、羊たちの沈黙のハンニバル・レクターが身につけているという設定が有名なようですね。

ハンニバル・レクター - Wikipedia

・・・全然今回の趣旨とは関係ないですが、シモニデスはエーゲ海にあるケオス島(現在のケア島)生まれだそうです。綺麗な夕日が眺められる高級リゾートがあるとか・・・いいですね。行ってみたい。

で、なんでリファラルにこれが使われる?

現在のプロダクト開発界隈でなぜメモリーパレスがリファラル採用の手法として認知されるようになったのでしょう?この手法を使ってリファラル採用を支援するような会社さんもあるようですが、今回改めて調べてみても起源ははっきりしなかったものの、Sequoia Capital - Human Capital Teamの記事が参照されていることが多いようです。

3X Your Referral Rates

いきなりリファラルでいい人紹介して!と言ってもなかなか挙がってこないので、エンジニアと構造化したコミュニケーションを行うことでエンジニアの知己を思い出してもらおうという考え方ですね。

メモリーパレスは本来場所と結びつけてそこを移動する・・・というもののようですが、リファラル活動では社員の経歴を宮殿と見立てて質問を行っていくというやり方です。確かに実際やってみるといきなり人物を思い出すよりも、経歴から想起した人をあげる方がはるかに思い出せるという実感が得られます。面白いですね。

公開されているサンプルのスプレッドシート

副次効果

よしよし、リファラル採用の候補者が上がってきたぞ。良い人と出会えるといいな。・・と採用担当者は考えるのですが、では一緒に取り組んでみたエンジニア個人としては何が得られるのでしょうか?

よくある誤解は「会社にとってメリットあるだろうけど、社員からすると一方的に自分から吸い上げられてメリットがない」です。この結果、協力しにくいというのはよく聞きます。では、何か。社員紹介制度に則った報奨金?なるほど。。

これも良いのですが、EMをやっている身としては、別のメリットもあるよと言いたいです。私は転職意思などにかかわらず振り返りを兼ねて職務経歴書(的なメモでも良い)を作ってみると非常に効果的だと考えているのですが、これに合わせてメモリーパレスを実施すると、何気なく過ぎてきた中に自分としての価値観などを見つけ出せるなーという気がしています。

いつも思い出す大恩人みたいな人が想起されてくることももちろん多いのですが、それよりも実は価値があるかもしれないのは、

  • 難しいプロジェクトでちょっと自分を助けてくれた先輩エンジニア
  • 障害対応時に颯爽とあらわれ、アドバイスで一緒に解決に導いてくれたSRE
  • 気持ちよく働けた同僚

のように今の自分を形作ってきた、”小さいかもしれないけど後になってみれば重要な経験”に関与してくれていた人たちの発見ではないかと思います。

さらに、なぜ彼らを思い出したのか・・と深掘りしていくと

  • 彼らの当時の振る舞いが今の自分にはできるのか
  • 今彼らはどういったポジションにいて何をやっているのか
  • 彼らの共通点は何か(=自分は何に価値を感じているのか)

など、改めて確認するとャリア形成(というと大袈裟な気もしますが)に役だったり、彼らに連絡をとって話をすることで、人物の想起の先にさらに経験の擬似体験などまで得ることができたりします。いいですよね!

実際にやってみると

メモリーパレスは一人でやることも可能なのですが、弊社エンジニアと実施してみると、ご本人の価値観についてよりお互いの理解を深めるきっかけにもなり、面白いなーと感じました。

  • 同じ企業にすれ違いで所属していたことが分かり心理的距離感がさらに縮まる
  • 優れたスキル・能力を身につけるに至ったプロセスを知ることができる
  • 共通の知人について「強い」「一緒に働いてみたい」という話で盛り上がる

ぜひこの記事を読んだ皆さんもまずは一回やってみてください。

ということで、さまざまな会社で取り組まれているであろうリファラル採用活動とメモリーパレス。せっかくなら個人としても得るものがあるように活用していきたいですね、という話でした。

最後に。弊社ではPdM、EM、Webエンジニア、QAなどプロダクト関連職種を積極採用中です。興味を持っていただけた方はTwitter DMでの連絡でも構いません。カジュアル面談しましょう!