産休・育休によるキャリアの不安。「戦略的キャリアチェンジ」で切り開いた、開発経験を活かすQAという道

こんにちは。2025年6月にエス・エム・エスに入社した柴山です。現在は介護/障害福祉事業者向け経営支援サービス「カイポケ」のリニューアルプロジェクトでQAエンジニアとして働いています。

プライベートでは1歳と4歳の子供を育てるワーキングマザーでもあります。今回は、多くのワーキングマザーが直面する「育児とキャリアの両立」という課題に私自身がどう向き合ってきたか。その「戦い方」と、新たな挑戦の場としてエス・エム・エスを選んだ理由についてお伝えします。

私自身の経験に基づく、かなり生々しい話も含まれますので、あらかじめご容赦いただけますと幸いです。

また、最近は男性育休の取得も増加傾向にあり(弊社でも取得報告は多く、非常に喜ばしいことです)、子育てとキャリアの両立は必ずしも女性に限った課題ではないと認識しています。それでもあえて今回は女性のキャリアにフォーカスしてお伝えできればと考えています。

育児とキャリアの両立に対する課題意識

子育て中の皆さん、仕事と家事と育児、どうですか?うまくいってますか?朝は子供のお世話や保育園の登園でへとへと、日中はなんとか仕事して、夜は寝かしつけや家事を終えてぐったり。残業する体力もないし、勉強会は大体アーカイブ配信を見るのみ……みたいな感じじゃないですか?少なくとも私はそうです。生活リズム、物事の優先度、仕事の向き合い方やキャリアの考え方。子供が生まれる前と後では全てが大きく変わりました。母親になって4年経ちますが、その変化には未だ困惑しています。

その中で、ここ数年私が悩んでいたのは、産休・育休による「キャリアの断絶」そして「マミートラック」でした。

キャリアの断絶

子供を妊娠・出産し、職場復帰するまでの期間は最短でも7か月*1、長ければ2年*2に及びます。しかもこれは単純な休職期間の話。実際には妊娠初期の悪阻に始まり、食欲不振、頭痛、眠気、こむら返り、動悸、息切れなど様々な不調が伴います。そんな状態で、通常業務をこなして更にはスキルアップを目指すのは極めて困難です(少なくとも、私にはかなり厳しいものでした)。これは私の体感ですが、妊娠発覚直後からパフォーマンスは落ち始めます。ホルモンバランスの乱れもありますし、正直に言えば「流産が怖い」「禁忌事項が多すぎる」といったストレスも大きいのです。

そのため、職務経歴書上の経験年数と実務が一致しないといった事態も十分に起こります。私自身もエンジニア歴は10年ですが、2回の産育休を挟んでいるため、実務の期間は7〜8年ほどでしょう。同じ経験年数の人と比較したとき「若干スキルが劣るのでは?」と見られる可能性があります。それならば休職中にスキルアップを目指したり、復職後にバリバリ働いてギャップを取り戻そう、と考えるかもしれません。しかし、それもあまり現実的な解決策ではありません。なぜなら、前述の通り妊娠中は著しくパフォーマンスが下がるうえ、子を産んで復職すれば仕事と家庭の両立という正解のない課題が待っているからです。

マミートラック

子供を育てながら働く女性にとって、一度は聞いた単語かもしれません。出産した女性が本人の意欲とは関係なく、昇進から遠いキャリアコースに乗せられてしまう状態を指す言葉です。要するに、子供が生まれる → 短時間勤務や早退遅刻で仕事にかける時間が減る→スキルアップや重要な仕事に取り組めない → キャリアが停滞、あるいは下降する、という流れですね。

パートナーや親族を頼って時間を捻出すれば、このようなマミートラックは回避できるかもしれません。しかし近年共働き核家族化の影響で、自分たちだけで仕事も家庭もまわす必要があります。私もそうです。

特にIT業界は、技術の進化が非常に速いという特性があります。1年、あるいは数か月で技術トレンドは移り変わり、休職前に使っていた技術がレガシーになることも珍しくありません。常に新しいOSSや設計・開発手法を学び続ける必要があり、近年はAIの発展によってそのスピードはさらに加速しています。

限られた時間の中で通常の業務と並行してスキルをアップデートし続けるのは容易ではありません。このような要求の高い環境は、「キャリアの断絶」や「マミートラック」という課題をより一層深刻なものにします。そして、「今の会社を離れることになった時、自分に市場価値はあるのだろうか」「このままITエンジニアを続けられるのだろうか」という、キャリアに対する強い不安に繋がっていくのです。

産休・育休後のキャリアチェンジという選択

この課題にどう向き合うべきか考えた末に、私が選択したのはキャリアチェンジでした。変化の速いIT業界でスキルが陳腐化するリスクと戦うよりも、全く新しい専門性を身につけることで仕事の幅を広げようと考えたのです。

私は現在QAエンジニアですが、それ以前はフロントエンドエンジニアとしてプロダクト開発に関わっていました。一人目の育休から復帰した際、休職による知識のギャップや開発環境の激しい変化に私は強い衝撃を受けました。仕事のスピードについていくだけで精一杯、「このまま最前線で戦い続けるのは難しい」と痛感したのです。そんな中、前職でQAエンジニアというポジションが新設されることになり、開発経験とテスト工程への理解があった私に声がかかりました。

正直、当時は未知の領域でしたが、これは新たな専門性を築くチャンスだと感じました。特に、今後のテスト自動化などを推進する上では、これまでの開発経験が大きな強みになると確信し、キャリアチェンジを決意しました。

この選択によって私はマミートラックに陥ることなく、IT業界で生き抜く新たなスキルを手にしました。しかし、一人QAという環境では、どうしても自分の成長に限界を感じるようになります。ライフステージの変化に左右されず自身のキャリアを実現するためには、継続的にスキルアップできる環境に身を置くことが最善だと考えました。それが、今回の転職を決意した理由です。

とはいえ、転職活動を開始した矢先に妊娠が発覚したため、実際は出産後の育休中に転職活動を再開しました。この辺りの経緯はJaSST nanoでお話ししています。

エス・エム・エスに入社した決め手

子供がいる私にとって、転職活動では仕事内容だけでなく、働く環境も同じくらい重要視しました。いくつかの条件を軸に企業選びを進める中で、特にエス・エム・エスに入社を決めた3つのポイントをご紹介します。

働き方の柔軟性:リモート勤務を前提とした組織づくり

保育園に入園した途端に起こる「保育園の洗礼」、誰しも経験があると思います。保育園入園直後に子供が発熱や下痢症状を起こし、頻繁にお迎えの電話がかかってくる、療養のためしばらく保育園をお休みする、といった状況のことですね。こういった急な呼び出しにもすぐ対応できる、子供を自宅看護しながら最低限仕事ができる、という理由からリモート勤務を希望しました。また将来的な地方移住も視野に入れ、長く働ける環境というのも1つのポイントでした。そのため、地方在住者が所属しているかも条件に加えました。

私が所属するプロダクト推進本部では、リモートワークを基本としながらも、出社するか在宅するかを選択できる体制が整っています。入社初日のオリエンテーションや総会などで出社が必要な場合も、事前に家庭内で調整して参加しています。

組織内には関東圏外の在住者も多く(私の知る限り、北は北海道から南は九州まで)、チーム内にも京都からリモートで働くメンバーがいます。場所が離れていてもチームのコミュニケーションに不都合を感じないのは、オンラインで円滑に連携できる組織づくりがされているからだと感じています。こうした柔軟な環境であれば、将来的に移住といったライフステージの変化にも対応できそうだと感じました。

専門性を高める環境:QAチームの存在

前職においてはQAエンジニアが一人という関係上、QA同士で業務相談ができない、という課題がありました。勉強会の内容をシェアしたり、品質に対する議論をしたり「他のQAチームはどのように工夫しているのだろう?」といった情報交換ができなかったのです。そのため、QAチームが存在すること、具体的には3名以上QAが在籍していて、横断的活動やコミュニケーションの場があることを条件に転職活動をしました。

エス・エム・エスでは、複数のQAエンジニアが所属しており、各プロダクトの品質向上活動を行なっています。同じプロダクトの別チームの様子も聞けるし、別プロダクトのQAエンジニアにお話を伺う機会もあるので、情報共有や交換がとても活発です。

また、組織としても勉強会やカンファレンスの参加を推奨しています。先日行われたJaSST Niigataも、メンバー間で活発な意見交換が行われていました。私は現地参加でしたが、他の方々はオンライン参加でした。いつかチームメンバーと現地参加できることを楽しみにしています。

相互理解と文化:面接で感じたフィット感

転職活動終盤、ありがたいことに2社内定を頂きました。私が希望する上記の条件はどちらも満たしていたので、どう決めようかと相当悩んだのを覚えています。その時に最終的な決め手となったのが、エス・エム・エスのオファー面談における誠実さと熱量、フィット感でした。

エス・エム・エスのオファー面談で印象に残ったのは、自分の強みだけではなく弱みまで伝えられ、それが自分の理解と一致していた(=私に対する解像度が高かった)こと。そして、入社後に活かすべきスキルと期待される活動が、かなり具体的かつ明確に示されたことでした。

そのおかげで入社後のイメージをより強く持つことができ、入社を決めました。

入社後に感じた、子育てと両立しやすい環境

ここからは、実際に入社して4か月で感じた「子育てと両立しやすい環境」についてお伝えします。

カルチャーと周囲の理解

まず、入社して特に重要だと感じたのは、会社のカルチャーです。

私が所属する組織には子育て世代が多いということもありますが、それに関わらず、お互いのプライベートを尊重し、仕事上でサポートし合う文化が根付いています。家族や自身の体調不良に関しても、仕事の調整が非常にやりやすく助かっています。

また、子供の体調不良などで自宅保育しながら勤務せざるを得ない状況もあります。そういった場合にもチームメンバーは業務調整など快くサポートしてくれます。実際私も転職したての頃は何度か子供を保育しながら仕事をしていましたが、ミーティングに子供が映り込んでしまうようなアクシデントも、温かく受け入れてもらえました。

柔軟な勤務を支える制度

私が所属するプロダクト推進本部では、コアタイム(12:00〜16:00)ありのフレックスタイム制度を導入しています。このコアタイムに勤務していれば、始業・終業時間は個人の裁量で柔軟に調整することが可能です。

そのため、朝の時間を活用して8時から業務を始めるメンバーもいれば、午前中に用事を済ませてからコアタイムが始まる12時に合わせて勤務を開始するメンバーもいます(もちろん、月当たりの定められた労働時間を満たすことが前提です)。

私自身もこの制度を活用し、普段は子供を保育園に送った後の9時頃から、お迎えの時間に合わせて18時頃まで勤務しています。もちろん、子供の通院などで日中の勤務が難しい日もあります。そういった場合は、コアタイム以外の時間を調整することで対応しています。

また、時間単位の休暇制度もあり、1時間単位で休暇を取得できます。子供の予防接種や役所での手続きなど、短時間の離席が必要な際にこの制度を活用することで、業務への影響を最小限に抑えつつ家庭の用事にも対応でき非常に助かっています。

これらの制度やカルチャーに助けられながら、仕事と子育てに奮闘している状況です。

仕事と子育てに追われる一日のスケジュール

ここでは私のとある平日のスケジュールをご紹介します。出社や子供の通院などがある日は変動しますが、普段は概ねこのような流れで一日が過ぎていきます。

我が家は夫婦共にリモートワーク(旦那はたまに出社)かつ保育園が近所なので、フルタイム勤務でギリギリ家庭を回している状態です。これが1つでも欠けていたら絶対に無理だろうな〜と日々思っています。

  • 06:00 起床・朝の準備
  • 08:30 保育園登園 & 業務開始
  • 12:00 昼食
  • 17:50 業務終了・お迎え
  • 18:30 帰宅・夕食
  • 19:00 お風呂
  • 21:00 寝かしつけ・残りの家事

子供たちがいない間はほぼ勤務時間なので、家事は昼休みや隙間時間にねじ込んでこなしています。やはり家事に手間をかけられないので、食器洗浄機やロボット掃除機、ドラム式洗濯機は必須です……。

特にご飯を作る時間(食材調達から食材管理、献立、調理、後片付け含む)が圧倒的にないので、我が家ではつくりおき.jp*3を活用しています。とてもおいしくて経済的で時短にもなります。でもママの作った料理じゃなくてごめんねっていう謎の罪悪感に駆られるんですよね。これが地味にメンタルに来るんだよなあ〜。とはいえフルタイム勤務しながら夕食を作るのは(私には)絶対に無理です。時間のない中作ったご飯を残されても悲しいしね。

おわりに:ライフステージの変化とキャリア形成

ここまで、産育休と女性のキャリアや仕事と子育ての両立について語ってきました。決して偉そうに語れる立場ではなく、そんなに上手く立ち回れているわけでもない、というのが正直なところです。「子育てを言い訳に仕事を諦めたくない」という気持ちと、「とはいえ仕事に全力投球して家庭を顧みないのは、家族として健全ではないよね」という現実との間で今も毎日のように葛藤しています。

子供がまだ未就学児で保育園に助けられている部分もあるけど、小学生に上がったらどうなるんだろう、学童に行ってもらう?夏休みはどう乗り切ろう?といった先の心配で頭がいっぱいです。まあでも正直なるようにしかならないんだろうな、と最近は割り切るようになりました。子供や家庭に何か大きな変化があった時、会社員を続ける選択ができるよう、少しずつでもキャリアを積み上げていきたいです。

現在はQAエンジニアとして、主にPlaywright(コードベースのE2Eテストツール)を用いたテスト自動化の推進に取り組んでいます。この活動はこれまでの開発経験を大いに活かせる領域です。他にも開発者視点でテストの課題や改善点を見つけ出し、それを解決していくプロセスを通じて、QAエンジニアとしての専門性を高めていけたらと考えています。

私自身、特別要領が良いわけでも体力があるわけでもありません。たぶんどこにでもいる普通のワーキングマザーです。だからこそ、この記事が同じ境遇で働く方々の支えになれたらと願っています。

こうしたライフステージの変化はキャリアを諦める理由ではなく、働き方や自分自身を見つめ直す最高の機会なのかもしれませんね!

*1:10月ごろに出産し、0歳児クラスに生後5か月で預けるパターン。産前休業が出産予定日の1か月前なので9月に休職、4月に保育園入園と同時に復職する想定。

*2:0歳児クラスで入園できなかったパターン。2歳の誕生日前まで育休の延長が可能。

*3:数日分の食事を宅配で届けてくれるサービス。おかずのみが冷蔵で届くので、ご飯と汁物さえ用意すれば栄養バランスの整った食卓が実現できて助かっています。おいしいし。忙しい家庭におすすめ!