はじめに
はじめまして。 人材紹介開発グループでweb履歴書作成サービス『履歴書できるくん』の開発を担当している松尾と申します。
2020年に新卒入社し、昨年度よりスタートしたweb履歴書プロジェクトでwebの開発を担当させていただいております。今回はそんな新規サービスの立ち上げからリリースまでの経緯と振り返りについてお話しできればと思います。
プロジェクト発足
転職活動において、履歴書の作成は転職活動の内定を左右する大変重要なプロセスです。それ故に多くの労力を必要とします。たくさんの文字を書かなければいけなかったり、少し難しい文章を考えないといけなかったり。さらに、弊社の人材紹介サービスを利用いただく場合は、転職活動をサポートするキャリアパートナーに作成した履歴書の画像を送付し、その画像に対してキャリアパートナーが添削を行うというフローで履歴書作成が行われておりました。
これにより、質の高い履歴書の作成は実現できていた一方で、システムがない中での運用は多くの時間と手間を必要としていたため、よりスムーズな転職活動のご支援に向けた改善が求められていました。
今回のプロダクトでは、上記の課題を解消し、求職者とキャリアパートナーの双方にとってより良い体験を提供することを開発の軸に据えました。
プロダクトでの解決
本プロジェクトでは履歴書作成から添削までを一貫して行えるWebサービスを開発しました。このプロダクトは、求職者がスムーズに履歴書を作成・提出できるだけでなく、キャリアパートナーとのやりとりも簡潔かつ効率的に進められるよう設計されています。
具体的な機能は以下の通りです。
自動入力機能と豊富な例文
- 住所検索APIを用いた住所の自動入力や、生年月日から学歴の入学・卒業年を自動算出する機能、弊社人材紹介サービスで取り扱う職種に最適化された資格一覧や例文一覧を取り揃え、履歴書作成にかかる様々な手間を削減しています。また、添削にかかるリソースも大幅に削減できる見込みです。
データの自動保存
- 履歴書は自動的に保存されるため、途中で編集を中断しても安心です。プライベートとの両立の中で、忙しい日常の隙間時間に履歴書の作成を進めることができます。
キャリアパートナーとのスムーズな連携
- 作成された履歴書は、キャリアパートナーに自動連携されます。通知を受け取ったキャリアパートナーはWeb上で履歴書を閲覧でき、リアルタイムで添削ができます。
PDFダウンロード
- 完成した履歴書はPDFとしてダウンロード可能です。電子書類としての提出のほか、コンビニでプリントアウトすることもできるため急な提出にも即座に対応できます。
これにより、求職者の作業負担を大幅に軽減しつつ、サービス全体としてのサポート品質を向上させることができました。
大変だったこと
プロジェクトを進めるにあたって、いくつかの困難にも直面しました。特に印象的だったのは、不確実性の高い課題への向き合い方とプロジェクト状況に応じた意思決定です。
不確実な課題にどう取り組むか
今回の開発チームは私含め比較的キャリアの浅いメンバーで構成されています。そのため、ゼロからプロダクトを立ち上げるという経験が不足しており、「何から手をつけるべきか」「どこまで決めれば開発に進めるのか」といった基本的な判断に迷う場面が多くありました。 そのような中で意識していたことは、「不確実性の高い領域から優先して取り組む」でした。最も見通しが立っていない部分から調査・検証を行うことで、その後の判断や設計の前提となる材料を早い段階で得るように心掛けていました。 また、判断の精度を高めるため、シニアエンジニアとの壁打ちやステークホルダーとのコミュニケーションを積極的に行い、プロジェクトのフェーズに応じて「今私たちがやるべきことは何か」をチーム内で意識的にすり合わせるようにしていました。 このような試行錯誤を繰り返す中で、チーム全体が「完璧な見通しがなくても、小さく進めて調整すればよい」と考えられるようになり、不確実性を前提に前進できる自走力が徐々に育っていったと感じています。
スコープ調整と意思決定
こうした不確実性の高い課題に対して優先的に向き合いながらも、プロジェクト全体を前に進めるには、状況に応じた柔軟な意思決定が求められました。 実際にプロジェクトを進める中で、当初の計画にはなかったタスクや新たな課題が判明し、当初想定していたスケジュールでのリリースは現実的ではないという判断に至りました。そこで私たちは、現時点で実現できる最も価値のあるプロダクトとは何かを考え、リリースブロッカーを洗い出すことで、機能の優先順位を見直しながらスコープの調整を行いました。 結果的に、限られた時間とリソースの中で価値のあるリリースを実現できたということが、チームの大きな自信につながりました。
最後に
リリースから間もない段階ではありますが、早速次のような成功事例が寄せられています。
- 履歴書の作成が心理的なハードルになっており、なかなか転職活動に踏み出せなかった求職者の方が、このツールを使って履歴書を提出してくださった
- 他社の人材紹介サービスと併用していた求職者が、履歴書作成までサポートする一貫したサービス提供を理由に、最終的に弊社を通じて転職を決めてくださった
またキャリアパートナーからは、当初予定していた完璧なリリースができなかったことに対して
- 「自分たちが活用して意見を出していける、自分たちによってよりよいサービスになる」
- 機能追加をきっかけに、中長期的なご支援や定期的なフォローアップが可能となり、より一人ひとりに寄り添ったサポートができるようになった
といった前向きなフィードバックをいただいています。
当初の計画からスコープを絞り込んでのリリースでしたが、限られたリソースと不確実性の中で「何を作り、何を作らないか」を判断し、プロダクトの価値を最大化するという経験ができたことは、今回のプロジェクトを通じて得られた最大の学びでした。
今回得た学びを活かしながら、求職者、キャリアパートナー双方の課題に向き合い、価値あるプロダクトを届けられるように引き続き取り組んでいきたいと思います。