開発チームの活動を見える化できた話

この記事は株式会社エス・エム・エス Advent Calendar 2024の12日目の記事です。

エス・エム・エス BPR推進部キャリア横断開発グループ 事業者コミュニケーションチームの井上です。この記事では、私たちのチームが直面していた課題、改善に向けた取り組み、そしてその成果についてお話しします。

チームの概要と背景

私たち事業者コミュニケーションチームは、エス・エム・エスの人材紹介サービスをご利用いただいて働き手を探している事業所の求人情報を管理し、弊社のキャリアパートナーを通じて転職を検討している求職者の皆様へより適切な提案が出来るよう支援するチームです。

だからこそ、求人情報を正しく管理した上で最新の情報が入るようにシステムを担保し、迅速な価値提供を目指しています。 しかし、今までの取組み方では以下の課題により、迅速な価値提供が実現できていませんでした。

直面していた課題:3つの不透明

価値提供に時間がかかっていた背景には、以下の「3つの不透明さ」がありました。

1. 実装方針が不透明

チームリーダーが開発案件を開発メンバーに割当て、要件定義書と大まかな設計図を渡し、詳細な実装方法についてはメンバーが検討して決めていました。 実装方法の内容や進捗の確認についてはリーダーとメンバーが1対1のMTGで行っており、他のメンバーへの共有もありませんでした。これにより、以下の問題が発生しました。

  • メンバーが実装方法に悩んでいたとしても、相談相手がリーダーしかおらず、リーダーがボトルネックになり、開発が円滑に進まない
  • メンバーが長期不在になった場合、開発が止まってしまう

2. 進捗状況が不透明

進捗確認はリーダーと夫々の案件を担当するメンバーが1対1で行っており、MTGをしないと順調なのか、遅れているのか分からない状態でした。そのため、以下の問題が発生していました。

  • 定期的なMTGがないことで開発の遅延や問題の早期発見が出来ない
  • チームリーダーが進捗把握するために不定期なMTGが日常茶飯事で発生するため、メンバーの活動時間が削られてしまう

3. 知識・経験が不透明

開発メンバーの活動内容がチームに共有されていないことで、以下の問題が発生していました。

  • 特定の案件に経験がある人が継続して同じ案件に携わることで属人化していた
  • 業務を別のメンバーに引き継ぐ際、該当業務に関連する資料が見つからず改めて作成していたが、実は社内のドライブに保存されていた

3つの不透明が相互に影響し合い、チーム全体の効率が低下してしまうことで迅速な価値提供が実現出来ていませんでした。

課題解決への取り組み

私たちは以下の施策で課題解決に取り組みました。

1. 実装方針の「見える化」

リファインメントイベントの導入

新たに生み出したい価値をチーム全員で話し合う時間を設けました。リーダーがステークホルダと話し合った内容をチームに説明し、チームが実現方法を話し合い、全員で合意するための時間です。 これにより、実装方法に悩んだ時はリーダーと相談ではなくチームメンバー同士で話し合い、解決できるようになりました。

完了要件の記入

「開発が完了したといえる状態とは何か」を明記するようにしました。これがあることでリーダーが実現したい状態と出来上がった機能のずれをなくすと同時に、メンバーが休んだときに他のメンバーが何をすべきかがわかり、実装を進めることができるようになりました。

2. 進捗状況の「見える化」

JIRAボード機能の活用

開発タスクを小さなチケットに細分化し、開発の進捗状況を「未着手」「対応中」「リリース待ち」「完了」などのステータスで管理し、一目でわかるようになりました。

デイリースタンドアップの実施

チームで毎朝の15分、JIRAボードを見ながら進捗やブロッカー(開発が進んでない状態)をメンバー全員に相談するようにしました。問題の早期発見に繋がり、手が空いたメンバーが他のメンバーを支援することが容易になりました。

3. 知識・経験の 「見える化」

作成した資料をチケットに集約

JIRAのチケットに仕様書や試験書など関係する資料を関連付けることを始めました。これにより引き継ぎも容易になり、特定のメンバー以外でも開発内容を把握できることで、属人化から抜け出すこともできるようになりました。

課題解決による成果

実装方法、進捗状況、知識・経験をチーム全体で共有できた結果、課題解決前の月毎のリリース数の平均が12件に対し、解決後は月平均20件まで増加しました。これにより、以前よりも多くの数の求人情報に最新の情報が入るようにシステムを担保し、迅速な価値提供を目指しています。

今後の展望

知識・経験の「見える化」により、属人化を一定程度解消することができましたが、完全には解消に至っていません。 チームがシステムを適切に担保し、迅速な価値提供を継続するためには、属人化の解消が必要不可欠です。 属人化が生じていた原因である特定業務への知識・経験の偏りを解消するため、今後は開発業務のローテーションや勉強会の実施を通じて技術共有を進め、属人化の解消に取り組んでいきます。