はじめに
この記事は 株式会社エス・エム・エス Advent Calendar 2024の12月20日の記事です。
キャリア事業部でマネージャーをしている @kenjiszk です。実は2023年もアドベントカレンダーの20日目の記事を書いたのですが、あっという間に一年が経ってしまいました。今年1年、キャリア事業部でどんなことを考えながらどういった取り組みをしてきたかということを紹介していきます。
「長期がすべて」とは?
タイトルにある「長期がすべて」という言葉は、ジェフ・ベゾスが1997年に株主に向けて送った手紙から引用しています(出典: Invent & Wander)。仕事には、長期目線と短期目線の2種類がありますがここでは長期目線がすべてと言い切っています。実際の現場でそんなことだけを言ってもただの正論暴力で物事は進んでいかないわけですが、意思決定者がそう言い切っていることには一定の価値があると思います。
私自身の解釈としては、何でもかんでも長期的なタスクだけを実行せよ、ということではないと捉えています。例えば、今の売り上げがないために会社が潰れてしまうのであれば今に集中することは正しい目線だと思います。一方で、短期的な目線だけで仕事をしていると物事の根本解決や業界自体を変えていくような変化を起こせません。技術的な例を出すと以下のような状況は容易に想像できます。
- 技術負債が積まれていくが返済はされないので、じわじわと真綿で首を絞められるように開発効率が落ちていく。
- システムの抜本的な改善が行われにくく、それを利用して業務をする人の効率を線形にしか向上させられない。相対的に世の中が進化していく中で、大きな変化に乗り遅れる。
「長期がすべて」という言葉をもう少し噛み砕くと、意思決定を行う時には常に長期目線を持つ、ということかと思います。たとえば、
- 潜在的な市場規模は大きいが成長に時間がかかる事業を支えるために短期的な施策を行うこと
- 残存者利益を得るための短期的な集中投資
といったケースから生まれる仕事は、それ単体で見ると短期的な仕事に見えますが、長期目線を持った仕事と捉えられます。
人材紹介事業において長期目線が難しい理由
私たちのチームが開発している人材紹介サービスは、フロー型のビジネスであり短期目線に陥りやすい特性を持っています。サービス利用者は、毎年同じように転職をするわけではないので、今年使ってくれたユーザーが必ず来年も使ってくれるというサービスではありません。そのため、気をつけないと今年度の数字に反映できる仕事に視点が寄ります。その一方で、一年以上かかるような仕事についてはなかなか優先度が上がらない、スタート時は熱量は高いが年度末に向けて他の仕事に優先度が劣後していくという圧力も生じます。
システムの作りの悪さは短期目線を加速させる
システムの作りの悪さがその傾向を加速させます。私たちのシステムでもこういった傾向は0ではありません。
たとえば、十分な機能を持つツールを提供できていなかったり機能拡張が難しい構造になっている部分において、今できることの範囲内で最適化を回してしまう、結果的に小手先で何か数字を上げるようなことだけに終始してしまう、ということが起きてしまいます。他にも、テストが不十分なので安心して開発できる範囲だけで機能拡張をしよう、といったことも繰り返していくと事業施策の幅をどんどん狭めていきます。
こういった状況においても、事業は成長をするのでパッチ的な対応でなんとか凌ぐという事を繰り返した結果、短期目線を加速させることになります。エンジニアの視点で考えれば、我々が拡張性のある柔軟なシステムを作れているなら組織は長期目線の仕事に着手しやすくなる、という点に気をつけないといけません。
今年できた取り組み
今年取り組んだ長期的な目線での仕事を二つほど紹介します。
ナース専科 転職のリブランディング
フロー型のビジネスにおいても、長期的にユーザーと関係性を作る上で重要なのがブランディングです。今年の8月に、これまで「ナース人材バンク」という名前だった看護師向けの転職サービスを「ナース専科 転職」という名前に変更し、他の看護師向けのサービスとブランド統合を行いました。
https://www.bm-sms.co.jp/news-press/prs_20240805_nursesenka-renewal/
ブランドを作るというのは、ユーザーとの関係を長期で考えている証であり、単発の転職というイベントでユーザーを支えるのではなく、次の転職でも使いたい、職場で困ったことがあったらナース専科を頼ってみようと考えてもらえるようなサービス作りを計画しています。
キャリア事業横断システムのアップデート
システム面でも、今年は大きな取り組みをスタートすることができました。詳しくはこちらのブログに書かれているのでぜひ読んでみてください。
キャリア事業のビジネスの歴史は長いので、どうしても個別最適や目の前の数字の達成のための仕組みがあるのですがこれに対して、今考えられる理想的なアーキテクチャを議論し、それに向かってどのように階段を登っていくのかという議論をしています。
長期を考える時間を意図的に取る
基本的に事業としてやりたいこととエンジニアの人数を比較すると、やりたいことの方が必ず多くなります。そんな中で長期目線を考える時間を取ることには意思が必要です。キャリア事業横断システムのアップデートは今年に入ってから毎週チームメンバーとオフラインで顔を突き合わせて未来のあるべき姿を議論するといった時間を意図的に取るようにしています。
長期を考える仲間を募集しています
色々と偉そうな事を書きましたが、現実は目の前でやらないといけないことと、将来のために考えないといけないことの両方が山積みです。 少子高齢化により生じる医療人材不足の解決に対して長期的に一緒に取り組んでくれる仲間を募集しています!